2025年度補正予算から読み解く、介護経営の未来戦略
メルキタ介護
2026.02.16
2025年11月、介護業界に大きなインパクトを与える補正予算が成立しました。医療介護等支援パッケージと重点支援地方交付金を合わせた総額は約2兆円。一見すると手厚い支援に見えますが、実はこの施策には未来へ向けた国の明確な意図が込められています。
処遇改善は最大月1万9000円、ただし条件付き
今回の支援パッケージの目玉は介護職員への賃上げ支援です。基本の月1万円に加え、共同化で5000円、環境改善で4000円と、最大月1万9000円までの上乗せが可能となりました。対象期間は12月から令和8年5月までの半年間です。
注目すべきは、この上乗せ分を受け取るための条件。訪問・通所サービスではケアプランデータ連携システムへの加入または加入見込みが必須で、施設系サービスでは生産性向上推進体制加算の1または2の取得が求められます。つまり、単に申請すればもらえるわけではなく、ICT導入や業務改善への具体的な取り組みを行う事が前提となっているのです。
さらに重要なのは、この補助金が一時的なものではないという点です。令和6年春の介護報酬改定を思い出してください。あの時も補助金でスタートし、その後処遇改善加算に組み込まれる形で制度化されました。今回も同じ流れで、令和8年6月からは新たな処遇改善加算として恒久化される見込みです。つまり、この半年間は「練習期間」であり、6月以降も継続して加算を取得するには、今のうちから体制を整えておく必要があります。
新たに対象となった訪問看護・リハ・ケアマネ事業所
今回の施策でもう一つ画期的だったのが、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護、訪問リハ、居宅介護支援事業所も補助金の対象に含まれたことです。
ただし、これらの事業所が補助金を受け取るには、処遇改善加算4の取得に準ずる要件を満たす必要があります。具体的にはキャリアパス要件1・2および職場環境要件への対応です。職場環境要件では、入職促進、資質向上、両立支援、健康管理、生産性向上など複数の区分から一定数の取り組みを選択し、実施することが求められます。
特に重要なのが生産性向上の項目です。生産性向上ガイドラインに基づく業務改善や、職場課題の見える化、時間調査などが必須項目として設定されており、国がいかに生産性向上を重視しているかが分かります。
一方で注意が必要なのは、今回の補正予算の大半が「既存メニューへの上乗せ」であるという点です。たとえば北海道の介護テクノロジー導入補助金は、毎年補正予算を見越して募集を行い、応募者の中から選定しています。今回補正予算が追加されたからといって、新たに募集が始まるわけではありません。
今後のキーワードは「生産性向上・ICT・地域連携」
今回の支援策は単なる一時的な補助金ではなく、令和9年度以降の制度改正に向けた布石と捉えるべきです。国が描くシナリオは明確です。ICT導入により業務効率を上げ、それによって生まれた時間を直接介護や職員の働きやすい環境づくりに振り向ける。結果として人材確保と定着につなげ、サービスの質を向上させる。この好循環を作り出すことが、今後の介護事業所に求められています。
介護ソフトのクラウド化、インカムやチャット機能の活用、見守り機器の導入。これらは単なる「便利なツール」ではなく、職員間の情報共有をリアルタイムで可能にし、業務のムダを省く生産性向上の基盤です。国はこうした取り組みを加算要件に組み込むことで、業界全体の底上げを図ろうとしています。
この半年間をどう使うかが、令和8年6月以降の加算取得、ひいては令和9年度の制度改正への対応を左右します。焦る必要はありませんが、この機会に自事業所の業務を見直し、できるところから生産性向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。
※この記事は2025年12月に開催したジョブキタオンライン勉強会「介護保険制度改正と緊急支援策について」の内容を元に制作しています。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。