あなたの事業所は大丈夫?最新調査から見えてきた「虐待が起きやすい現場」の共通点と対策とは?
メルキタ介護
2026.03.16
2025年12月、厚生労働省が高齢者虐待防止法に基づく最新の調査結果を公表しました。毎年この時期に出るデータは、全国・各都道府県の傾向を把握し、日常のケアを見直す貴重な機会です。今回はその調査結果をもとに、北海道の特徴も交えながら、現場が押さえておくべきポイントをご紹介します。
相談・通報件数は過去最多。しかし「悪化」とは言い切れない?
施設従事者による虐待の相談・通報件数は3600件超え、4年連続で増加しています。養護者(家族など在宅でケアする方)による虐待も12年連続増加で4万1814件となっています。
ただし、件数の増加イコール虐待の悪化とは言い切れません。なぜなら、発見・通報の仕組みがきちんと機能してきたという側面もあるからです。相談・通報件数が増加の一方で、実際に虐待と判断された件数は横ばいであることから「気づいて伝える」文化が根付いてきたとも読み取れます。
・通報者の27.4%が職員
・種別は身体的虐待が51.1%
・発生要因は、知識・意識不⾜(75.9%)、倫理観・理念の⽋如(64.3%)、ストレス・感情コントロール(62.5%)
・発生施設の種別は特養(28.9%)、有料⽼⼈ホーム(28.4%)
通報者の中では多くを占めているのは「職員」。責任感の表れていると言えるでしょう。一方で一部には死亡事例も存在し深刻さが浮き彫りになっています。この問題は早急に取り組む必要があるでしょう。
・通報者の35.6%が警察
・種別は身体的虐待が64.1%
・虐待者は息子38.9%、夫23.0%と男性が中心
・被虐待者の85.7%が虐待者と同居
・発生要因は認知症の症状への対応困難58.1%、介護疲れやストレス57.2%
近年は警察による通報が多い特徴が見られます。つまり、特に緊急性の高く迅速な介入の必要があるということです。また必ずしも「悪い人が虐待する」わけではなく、構造や環境、知識不足が虐待を発生させているという点も見られます。だからこそ、プロの支援者がどう介入するかが極めて重要になるでしょう。
孤立や生活困窮が浮き彫りになる、北海道の特徴
北海道の施設虐待の相談通報は146件(前年度121件)で、全国比4%を占めています。全国と比較すると、北海道には以下の特徴が出ています。
・経済的虐待の割合が全国より高い
・虐待を行った職員の年齢は60代以上が多く、全国でも突出した水準
・虐待を行った職員は女性の割合が高い傾向がある
人員不足・業務の多忙さ・教育体制の課題が影響していると考えられます。重度者や認知症の方の割合が多いことも、虐待リスクを押し上げている要因として顕著に出ています。
また在宅の養護者虐待では、介護放棄が18%(全国14.3%)、経済的虐待が15.9%(全国11.9%)と高く、地域の孤立や生活困窮が背景にある可能性があります。一方で、職務上知り得た者(ケアマネジャーや訪問介護員など)からの通報が全国より多い点は、北海道の介護従事者の安全意識の高さとして評価できるでしょう。
傾向を踏まえた、現場でできる対策とは?
1.「随時」の情報共有を習慣にする
新しい調査データが出たタイミングで職員と共有するなど、定期研修以外にも学ぶ機会をつくりましょう。自分たちの事業所に近いリスクを具体的にイメージすることが予防の第一歩になります。
2.記録の内容を振り返る
ケアの丁寧さは記録に表れます。記録が薄くなっていないか定期的に確認しましょう。ヒヤリハットの振り返りも、過去の事例から学ぶ有効な機会です。
3.ストレスマネジメントの仕組みをつくる
虐待の発生要因の多くは職員のストレスです。チームでの情報共有や、安心して働ける職場環境づくりを進めていきましょう。
4.介護理念・行動規範を改めて確認する
介護保険法の基本テーマは「自立と尊厳」です。日頃のケアがこの理念に沿っているかを、組織として振り返る機会をつくることが重要です。
データを「自分ごと」として読みましょう。
知識だけでは虐待は防げません。組織の雰囲気・人間関係・言葉遣いなど、日常のケア文化の質が虐待防止に大きく影響します。今回の調査データを参考に、自分たちの事業所でのケアや組織の状態を振り返り、見直してみましょう。
参考:厚生労働省 北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課
※この記事は2025年1月15日に開催したジョブキタオンライン勉強会「『高齢者虐待防止法』対応状況調査結果からみる傾向と対策」の内容を元に制作しています。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。