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どう変化する?「27年度介護保険制度・報酬改定」の最新情報

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2025.12.16

12.18_サムネ.png現在、厚生労働省の運営する社会保障審議会・介護保険部会では、2027年の介護保険制度・報酬改定に向けた議論が本格的に開始されています。また、昨年末に組織された「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会では2040年を見据えた議論が活発に展開されています。今回は最新の議論状況から、事業所が今から準備すべきことをご紹介します。

改定で検討されている5つのテーマ

次期改定では以下の5つが主要テーマとして挙げられています。

1.地域包括ケアシステムの推進
2.認知症施策の推進・地域共生社会の実現
3.介護予防・健康づくりの推進
4.保険者機能の強化
5.持続可能な制度の構築・介護人材確保・職場環境改

上記の背景にあるのが人口の変化。85歳以上の人口は2035年がピーク、高齢者人口は2043年に約3,900万人でピークを迎えると想定されています。つまりあと18年で事業のピークアウトが来るため、中長期の事業計画ではこの時期を意識する必要があります。また地域差がどんどん顕在化し、都市部は増加する一方で、中山間地域(※)では減少していきます。

※平野の外縁部から山間地にかけての地域、日本の国土面積の約7割。

さらに認知症高齢者については、MCI(軽度認知障害)の人が2025年に1,000万人、2040年ごろには1,197万人に増えるだろうと推計されています。単身世帯の認知症高齢者も2040年には331万人に増える見込みです。

働き手の面では、2023年10月時点での介護職員数が212.6万人、前年度と比べて2.8万人減と、初めて「減少」に転じました。2040年には272万人の介護職員が必要とされていることを考えると、もはや「待ったなし」の状況です。

あなたの事業所はどの地域?3類型で変わる対応策

今回の改定で最も重要なのが、全国を3つの地域類型に分けて制度設計するという方針です。

●中山間・人口減少地域:過疎化が進み、介護事業所も介護職員も確保が困難な地域
●大都市部:高齢者が増え続け、介護サービスの利用者が急増する地域
●一般市:高齢者数の増減により、介護事業所が地域内で偏って存在する地域

北海道では、札幌市が一般市、それ以外の多くの地域が中山間・人口減少地域に該当する見込みです。帯広市や旭川市などの中核市は一般市になる可能性もあるでしょう。

一般市では既存の施設や人材を有効活用しようということで、早めの準備を促しているというところです。例えば入所系の施設で職員が集まらずユニットを閉めているような事業所を、サービス付き高齢者住宅で使えるようにするといったことも含めて検討されています。

中山間・人口減少地域では職員配置ルールの柔軟化や包括的報酬評価、市町村による直接事業や共同化へのインセンティブが検討されています。例えば、地域の実情に合わせて、職員配置の在り方をより柔軟に見直す動きも議論されています。また、管理職や専門職の常勤・専従要件の緩和、夜勤要件の緩和なども議論されています。さらに、報酬体系についても、サービス内容に応じた柔軟な仕組みづくりが検討されています。

今、事業所が取り組んでおくべきこととは?

1.自分の地域がどのタイプか確認する

まずは市町村の介護保険事業計画を見て、自分の地域が「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市」のどれに該当するか確認しましょう。地域によって使える制度が変わります。

2.近隣の事業所と協力体制をつくっておく

人手不足を乗り切るため、複数の事業所が協力する動きが進んでいます。例えば、消耗品をまとめて購入して安く仕入れる、経理や総務の事務作業を1つの事業所がまとめて担当する、忙しい時期に職員を融通し合うなどです。今から近隣事業所との関係づくりを始めましょう。

3.空いている施設スペースの活用を考えておく

公的支援を受けて整備された施設は、通常10年〜15年は用途変更できません。しかし今回、この制限が緩和される見込みです。空いているユニットを他のサービスに転用できるようになる可能性が高いため、活用方法を考えても良いかもしれません。

来年以降はさらに具体的なルールが決まります。2027年度改定だけでなく、2040年に向けて今から準備を始めることが重要です。

※この記事は2025年10月16日に開催したジョブキタオンライン勉強会「2027年介護保険制度・報酬改定に向けた最新動向を解説!」の内容を元に制作しています。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。