「気をつけましょう」で終わらせない!事故を繰り返さない仕組みのつくり方とは?
メルキタ介護
2026.08.17
介護事業所や送迎の過程で思わぬ事故が起きた後、報告書を書いて、防止策を書き込んで終わる...事故後対応が再発防止ではなく「報告書を作ることがゴール」になっていないでしょうか。事故が繰り返される原因は、職員個人の不注意や力量不足だけではありません。今回は事故後の対応を仕組み化し、真の再発防止を実現する方法や考え方をご紹介します。
事故が繰り返される組織に共通する「負のスパイラル」とは?
もっとも事故が起きやすいのが、体制に変化があった時。新年度明けや異動、新人の入職などは典型的なつまずきが起きやすいタイミングです。連携の不安定さから「ヒヤリ・ハット」が増え、いつか大きな事故が起きるのではという不安が広がります。
ひとたび事故が起これば報告書の作成や委員会の開催にリソースが奪われ、日常のサービス提供が圧迫される。そこで「報告書を書いて終わり」にしてしまうと、充分な再発防止策がとられず「負のスパイラル」へと陥ってしまいます。
事故を再発させない組織には「事実を把握する」「分析する」「対策する」という三つが組織としてセットで備わっています。個人の意識改革を求める前に、この構造が自分たちの事業所にきちんとあるかをまず、確認してみましょう。
報告は「事実」と「解釈」を分けることから
事実把握が不足していると、その上に立てる分析も対策ももろくなります。よくあるのが、実際には見ていない場面を「本人が急いでいたため」などと推測で書いてしまうケース。これでは客観的な事実とは違う内容がミスリードを生んでしまいます。
そこで意識したいのが5W1H、正確には4W1Hプラス1Wという考え方です。「なぜ」を記録に混ぜ込むと憶測が入るため「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」を誰が読んでも映像が浮かぶように書きます。「慌てているようでした」は感想であり、事実ではありません。早足だったのかゆっくりだったのか、事実だけを残しましょう。
分析では「なぜ」を最低3回は繰り返し、直接原因、背景要因、組織要因へと深掘りします。「不注意だった」「忙しかった」で止めると、対策は「注意する」「共有する」しか出てきません。
たとえば配薬の際に別の利用者の薬を渡してしまった事故。「忙しくて確認不足だった」で片づけるのではなく、薬の配置が複雑ではないか、朝に業務が集中して集中力の維持が物理的に困難ではないか、新人が疑問を口に出せない雰囲気ではないか、と掘り下げます。事故の背景に「確認作業が行いにくい環境が存在していたのではないか」という視点です。
人ではなく、仕組みと環境で守ること。
再発防止対策の際は三つの層があると把握しておきましょう。このうち、安易に取り組みやすい「声かけ」や「注意喚起」など、人に頼る対策はもっとも脆弱です。まずルールの整備やチェックリストの導入といった「仕組みの対策」をすべきです。属人化せず、誰がやっても同じ結果になる状態をつくります。
そして最も重要なのが「環境の対策」。物理的に間違えようがない環境づくりをしましょう。例えば夜間の照度不足の解消、物品配置のルール化、薬の色分けや棚番号の整理、センサーの活用などが挙げられます。人手が足りずダブルチェックができないのであれば、一人でも二重に確認できる方策そのものを考える必要があります。
つくった対策は、複数の機会と複数の手段で周知します。掲示を1回しただけでは「周知」とはいえません。きちんと実践されているかをモニタリングし、1〜2週間かけて評価をして改善する。このPDCAを回すことが定着につながります。
分析の枠組みとしては医療・介護現場に特化したフレームワーク「P-mSHELL(ピーエムシェル)分析」の活用も有効です。マニュアルや手順書、設備や照明・温度などの環境、担当者本人と同僚や家族、そこに利用者ご本人の心身の状況と、勤務体制や研修などをさまざまな視点に分析していきましょう。
事故ゼロは短期間で達成できる目標ではなく、安全な仕組みを日々の業務のなかで育てていくプロセスを経て生まれます。事故が起きた後のPDCAをいかに回すかが、再発防止の要となるでしょう。
※この記事は2025年6月18日に開催したジョブキタオンライン勉強会「リスクマネジメント ~事故後の対応で差がつく!再発防止につなげる実務ポイント~」の内容を元に制作しています。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。