メルキタMailkita

10月に義務化の「カスタマーハラスメント防止対策」。早めの対策で「職場を守る投資」を。

メルキタ介護

2026.09.14

メルキタ介護カスハラ_title.png2026年10月にすべての企業、事業者に対して「カスタマーハラスメント防止対策(または防止措置)」が義務化されます。カスハラ対策と聞けば、真っ先に「リスク管理」という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかしこの捉え方こそ、見直すべきポイント。今回はハラスメント対策は消極的なリスク回避ではなく、職員の離職防止や採用競争力の強化につながる「組織力強化への投資」だという発想の転換から解説していきましょう。

なぜ「義務化」への対応が急務なのか

今回の義務化の背景にあるのは、生産年齢人口の減少による深刻な人手不足です。令和3年の報酬改定・制度改定で、介護や障害の事業者にはカスタマーハラスメントへの対応が「努力義務」として課されました。
かつて平成30年前後に行われた実態調査では、介護現場でハラスメントを経験した人が半数を超え、なかには怪我を負ったり、それを理由に離職を考えたりする職員もいたといいます。さらに近年は、利用者の家族が職員に危害を加える重大事件も起きており、事態は一層深刻化しています。安心して働ける環境を整えることは、もはや個人の努力に任せる話ではなく、事業継続そのものに関わる必須の経営課題だと言えるのです。

事業所が整えるべき5つの体制

2026年10月までに事業所が一連の流れとして整えるべき体制は、次の5つです。

1.方針の明文化
「ハラスメントを許容しない姿勢」を組織として明確に示すこと。
2.相談窓口の設置
職員が早期に相談できる担当者や場所を用意すること。
3.マニュアルの整備
現場で実際に使えるガイドラインやトークスクリプト(台本)を用意すること。
4.職員研修の実施
マニュアルを機能させるための定期的な教育とロールプレイング。
5.情報共有の仕組みづくり
記録や報告のフローを整え、事例をアーカイブして次に引き継ぐこと。

これらはバラバラに整えるのではなく、一連の運営フローとして定着させることが重要です。特に方針については、契約書や重要事項説明書への明記、事業所内への掲示など、利用者との入口の段階で共通認識を持つことが、トラブル発生前の抑止力として機能します。

現場対応は「3つのステップ」で乗り切る

実際にトラブルが起きたとき、現場の心理的パニックを減らすために有効なのが、次の3つのステップです。

1.落ち着いて聞く
相手の言い分を否定せず、感情のピークをやり過ごすように耳を傾けること。
2.境界線を伝える
できることとできないことを、契約やケアプランに基づいて毅然と伝えること。
3.組織対応に切り替える
個人で抱え込まず、速やかに上司や同僚に報告し、複数名対応や一時中断も選択肢とすること。

この流れをあらかじめ職員に理解してもらい、トークスクリプトなどを使って練習しておきましょう。まずは「即答しない」「個人で判断しない」という原則を組織全体で徹底することが、職員を守ることにつながるでしょう。

ハラスメント対策で「職場を守る投資」を

カスタマーハラスメント対策は、10月の義務化をきっかけに慌てて整えるものではなく、職員の安全と安心を担保し、事業継続を支える基盤づくりの最大のチャンスとなります。
あらかじめ体制や対策を整えておけば、カスタマーハラスメントだけでなく、さまざまなトラブルにも組織として対応しやすくなります。こうした取り組みは組織力そのものを高め、ひいては採用力の向上や職員の定着にもつながります。持続可能な事業所運営に向けた重要な投資にぜひ、取り組んでみましょう。

※この記事は2026年7月16日に開催したジョブキタオンライン勉強会「カスタマーハラスメント対策」の内容を元に制作しています。

<講師>
kamiuchi.jpg
●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。