ベテランこそAI活用に最適!?介護現場で求められる「AI活用人材」の育て方
メルキタ介護
2026.10.12
ChatGPTやGeminiをはじめ、急速に身近になった生成AI。「便利そうだけど、介護の現場でどう使えばいいの?」「専門職の仕事までAIに任せて大丈夫?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。介護・福祉分野で重要なのは、AIに仕事を丸投げすることではなく、専門職の判断を支える「道具」として使いこなすこと。今回は、これからの介護現場に求められるAI活用と、その担い手となる人材の育て方についてご紹介します。
AIは「人の代わり」ではなく、専門職を支える「補助輪」
実は介護現場では、意識していなくてもすでにAIが使われ始めています。見守りセンサーによる動きの検知、介護ソフトでの文章整理、音声入力による記録などもその一例です。
例えば従来のセンサーは「ベッドから離れた・離れていない」といった単純な検知が中心でしたが、現在は寝返りなのか、人の動きなのか、布団が落ちただけなのかまで判別するものも登場しています。インカムで交わした会話を文字化し、介護記録へ連携できる仕組みもあります。こうした技術によって、記録にかかる時間や夜勤時の負担、情報共有の手間などを軽減できる可能性があります。
一方で、利用者の状態をどう捉え、どんなケアを選ぶのかというところまでAIに任せるのは別の話。AIは大量の情報を整理し、判断材料を示すことは得意ですが、その人の背景や表情、生活歴まで踏まえてケアを考えるのは専門職の役割です。AIは自転車の「補助輪」の役だと意識すると良いでしょう。
介護現場でAI活用が期待されている背景には、人手不足もあります。会議の文字起こしや議事録作成、レクリエーション企画のたたき台、モニタリング記録の整理など、直接的な介護以外にも職員が担う仕事は数多くあります。こうした部分をAIで軽くすることで、本来のケアに使える時間を増やしていく。まずは、そんな使い方から考えてみるのがよさそうです。
「AI=若い人のもの」と思わず、まずは小さく使ってみる
AIというと「若い職員の方が得意そう」と思われがちですが、実は可能性を持つのはむしろ、ベテラン職員です。というのも、AIが出した答えを使うには、その内容が本当に妥当なのかを判断しなければなりません。例えばAIがもっともらしい文章を作ったとしても、長年利用者と関わってきた人なら「この内容は少しおかしい」「この利用者には当てはまらない」と気づくことができます。
どんな情報が重要なのか、現場のどこに負担があるのか、何を楽にしたいのか。そこを一番よく知っているのも、長年現場で働いてきた人たちです。つまり、経験や専門知識そのものがAIを使う上で大きな武器になります。
AI活用人材というと難しく聞こえますが、特別な資格が必要なわけではありません。まずは触ってみることが大切です。毎日5分でもいいので、「この文章を整理して」「会議の論点をまとめて」といった小さなところから使ってみる。使っているうちに、「こんなことにも使えるんだ」と少しずつ感覚がつかめてくるでしょう。
勉強会でも、ケアマネジャーがモニタリング時に書いたメモを撮影して文字化したり、利用者の了承を得た上で会話を録音し、その内容を記録作成に役立てたりしているという話がありました。会議録の作成やレクリエーションのアイデア出しなど、身近な業務から使い始めている事業所もあります。
一方で、ツールだけを入れても定着はしません。分からないときに聞ける人がいること、失敗しても怒られないこと、どんな情報をAIに入れてよいのかルールが共有されていること。こうした環境を整えることも、人材育成の一部です。
AIに任せきらず、「考える力」を一緒に育てる
AIを仕事で使う上で、かなり大事なのが「聞き方」です。「○○について教えて」と漠然と聞くより、「何のために使うのか」「誰に向けたものなのか」「どんな条件があるのか」「どんな形で出してほしいのか」まで伝えた方が、使える答えが返ってきます。
ただし、返ってきた答えをそのまま信じてはいけません。生成AIは、誤った内容をあたかも事実のように示すことがあります。数字や根拠を確認し、「本当に正しいのか」「現場に合っているのか」と自分で評価する力が必要です。ここでもやはり、専門職としての経験が生きます。
そして、AIを単に「答えをもらう道具」にしてしまうのはもったいないと思っています。例えば「私はこう考えているけれど、矛盾はないですか」「別の立場から批判してください」「この考えに足りない視点はありますか」と聞いてみる。そうすると、自分の考え方を見直したり、気づかなかった視点を拾ったりできます。
何でもAIに任せれば、確かに楽にはなります。ただ、その使い方ばかりでは、自分で考える機会が減ってしまいます。むしろAIとのやり取りを通じて、自分自身の思考を鍛える。その積み重ねが、結果としてAIをうまく使える人材につながるでしょう。
AIは介護職の仕事を奪う存在ではなく、人の判断や専門性を支える道具です。まずは日々のちょっとした業務から、「この仕事、AIで少し楽にできないかな」と考えてみるところから始めてみてください。
※この記事は2026年8月19日に開催したジョブキタオンライン勉強会「今後の介護現場を支える『AI活用人材』の重要性と未来」の内容を元に制作しています。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。