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【レポート】介護オンライン相互勉強会「生産性向上委員会設置義務化Vol.2〜進捗と課題の共有及び今後の取り組みについて〜」

メルキタ介護

2024.10.31

ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は9月27日(金)に行われた「生産性向上委員会設置義務化Vol.2~進捗と課題の共有及び今後の取り組みについて~」のレポートをお届けします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。

生産性向上の目的は、質の高い介護ケアと働きやすい職場環境の実現

2024年の介護報酬改定で設置が義務付けられた「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」(以降生産性向上委員会)。「生産性の向上」とはロボットやICT、介護助手の活用などの方法で業務の効率化を図り、職員の業務負担を軽減させることですが、重要なのはその本質を把握することにあると神内さんは話します。
「効率化と業務負担軽減によって生み出された時間を直接的な介護ケアの業務に充て、介護サービスの質の向上につなげていくことこそが生産性の向上の本質です。介護ケアの時間を短縮して効率化・業務負担軽減を目指すという誤った解釈をしている事業所も見られますが、それは厚生労働省の意図していることではありません」
さらに生産性の向上によって職場環境が改善されることで、周囲からの事業所評価も高まり、人材の定着・確保にもつながるのだと神内さんは続けます。
「厚生労働省が設置したポータルサイトには、生産性向上におけるガイドラインとともにさまざまな事例や活用シート、解説動画などが掲載されています。介護ロボットやICT機器の活用だけではなく、ボランティアや介護助手の活用、外国人労働者・障がい者雇用など、まだまださまざまな手段を用いることで効率化・業務改善が可能です」
参考:厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」

短期入所系・多機能系・居住系・施設系は3年以内の委員会設置が必須

短期入所系、多機能系、居住系、施設系サービス事業所については、令和9年3月31日までを経過措置期間としながらも、生産性向上委員会の設置が必須になりました。現場における課題を抽出・分析し、それぞれの状況に応じた対応を検討すること、利用者さんの尊厳と安全を確保しつつ、継続的な業務改善に取り組むための環境整備をすることが求められています。
「委員会設置のための検討事項や、想定される課題、設置単位、開催形態なども厚生労働省がポイント・事例集としてまとめています。また、加算を取得する事業所は、毎年10月に厚生労働省への関連データの提出が必要になります。次の報酬改定に影響を及ぼす可能性もあるため、猶予があるとはいえ取り組みを進めていきましょう」
参考:厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」

設置・開催体制づくりと、事例研究を

勉強会の後半では、参加者から相談や質問が寄せられました。一部を紹介します。

参加者A:実際に2024年度に入ってから2か月に1度のペースで委員会を開催しています。開催しながら回数やメンバーなどを調整していますが、通常業務に加えて委員会に関する業務が増えているので、ただでさえ多忙な現場スタッフをどのようにして巻き込んでいくかが課題になっています。タイムスタディ調査も実際にやってみると結構大変です。

神内さん:タイムスタディは確かに大変ですが、簡単に導入するためのソフトも存在します。委員会はまず設置・開催できる体制づくりをしていくことが加算1の条件としても挙げられているので、そこをクリアしてから実際に取り組んでみましょう。具体的な取り組みについては「介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰」の過去の表彰結果を参考にしてみるのも良いでしょう。
参考:介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰

参加者B:うちの事業所では外国人・障がい者雇用を進めています。まずは業務を細分化して、スポット業務をいくつも作って人材を募集しました。こうした取り組みが既存スタッフの意識改善にもつながり、職場の雰囲気が良くなったことで、見学者の採用人数が2倍に。離職率も減少したので、とても有効だったと感じています。

神内さん:素晴らしい取り組みですね。小さなきっかけから好循環が生まれて、意識改革や事業所のブランディングにつながっている良い事例だと思います。

参加者C:障がい者福祉の分野で働いているのですが、同様に生産性向上は必要だと考えていますし、国からも指示があると予想しているので、現在準備を進めているところです。

神内さん:介護と同様に障がい者福祉の分野でも生産性向上を目指した事業ICT化の先行事例が出てきています。なかにはタブレットで出勤確認する際に笑顔でないと出勤扱いにならないシステムなど、面白い工夫もあります。ICT化に温かみや面白みを取り入れた良い例ですね。

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。