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5つの「年収の壁」正しく理解していますか?

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2024.12.16

mailkita1216_title.jpgこのところ話題となっている「年収の壁」。特に年末になると、パートさんが年収調整のために働き控えを希望することも。しかし中には、漠然と「とにかく何としても100万を超えてはいけない」という理解のみにとどまっている従業員もいるかも知れません。
年収の壁はいくつかの段階に分かれています。具体的にはどんな種類の壁があるのか、そして経営者側にはどんな影響があるのか、おさらいしてみましょう。

パート従業員の年収の壁は5種類

年収の壁は配偶者の勤務状況や居住地域によって変化します。今回は、「北海道に住み、夫の扶養控除内で働くパート主婦」を例に説明します。

年収の壁.jpg年収の壁は100万、103万、106万、130万、150万と、5つの壁が存在します(※2024年12月現在)上記の図のように、年収が上がれば上がるほど、税金が増えたり社会保険料の負担が発生するので、従業員は「年収100万円を超えると働き損なのでは」と思いがちです。しかし、年収の壁は「働けば働くほど損」という単純なものではありません。

【従業員が年収の壁と働き方を考えるポイント】
◎100万円超で住民税、103万円超で所得税が発生するが、その金額は数千円程度に収まることが多い。

◎106万円もしくは130万円の壁で社会保険料の支払いが義務付けられるが、社会保険に加入することで、将来老齢厚生年金を受け取れたり、病気やケガをしたときに傷病手当金を受け取ることができる、といった恩恵がある。

◎150万円の壁で特別控除が減ってゆく(=夫の税金が上がる)が、これは夫の年収によって金額が異なり、夫の年収が一定額以上であれば特別控除自体が発生しない。

「年収の壁」の知識が乏しく、働きたくても働けないと思い込んで悩んでいる従業員もいるかも知れません。正しい情報を提供し理解してもらうことで、働き控えを減らし、人手不足の解消につなげることも不可能ではありません。

事業主への影響は「社会保険料の負担」

事業主サイドへの影響は106万円・130万円の壁による社会保険料の負担発生です。

106万円の壁:次の4つの要件をすべて満たした場合、従業員の社会保険料を負担しなくてはなりません。
1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
2. 月額賃金が8.8万円以上あること
3. 2カ月を超える雇用の見込みがあること
4. 学生ではないこと
※詳しくは社会保険の適用拡大で何が変わる?企業の対応ポイントをご参照ください。

130万円の壁:すべての事業主は従業員の社会保険料を負担しなくてはなりません。

負担は増えますが、前述の通り、社会保険の加入により従業員には恩恵が発生します。スキルや労働意欲の高い従業員の社会保険料を負担し、しっかりと活躍してもらうことは、職場にとってプラスに作用するとも考えられます。

まとめ

連日メディアをにぎわせている「年収の壁」。年収の壁が103万円から178万円に引き上げられると、パートやアルバイト従業員の手取り収入を増やし、就業調整を防げるメリットが期待できます。

事業主は、働き控えの解消による人件費の増加に備えたり、新しく雇用契約書を作成したりする必要があります。また、社会保険の壁を気にせずに働きたいという従業員に対し、今後のキャリア形成についても話し合う機会を設けましょう。
事業主が率先して「年収の壁」を理解し、従業員に周知させることで、より働きやすい勤務体制を整えることが望ましいでしょう。