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【レポート】介護オンライン相互勉強会「互助×ICTで実現する多世代見守りと地域共生支援」

メルキタ介護

2024.09.12

ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は7月18日(木)に行われた「互助×ICTで実現する多世代見守りと地域共生支援」のレポートをお届けします。今回は「みまもりあいプロジェクト」代表理事の高原達也さんが登壇し、同プロジェクトが開発、運用している「みまもりあいアプリ」について紹介しました。ファシリテーターはふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。

福祉SNS「みまもりあいアプリ」とは?

「みまもりあいアプリ」とは、2017年に生まれた地域共生支援のための無料アプリ。主に認知症患者の捜索を目的に生まれたサービスです。
GPS配信や捜索依頼機能を持つことで、認知症患者本人はもちろん、地域住民が登録を行うことで迷子になってしまった認知症患者の捜索に役立てられるほか、登録者同士が情報共有や交流をするSNSとしての機能も持っています。
「一般的なSNSと異なり、個人情報を入力することなく登録が可能です。多くの人にご登録いただき、匿名で気軽に地域情報を受け取ったり発信したりしていただくことで、『みまもりあい』『つながりあい』『ささえあい』をよりスムーズに循環させることがねらいです」
現在は介護福祉分野だけでなく、商店街の活性化イベントや保険分野など、さまざまな用途で活用されている「みまもりあいアプリ」。すでに60以上の自治体と協定を締結、約210万人(2024年8月現在)がアプリを導入し、毎年多くの行方不明者・迷子の認知症患者の捜索に役立てています。
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行方不明者の捜索・発見にも活用し助け合う社会に

高原さんがサービスを開発するきっかけとなったのは、警察が発表している交番に届けられる現金の金額が毎年平均190億円にも及ぶと知ったことなのだそう。
「これこそが日本に根づいた『互助の精神』であり、インフラの1つであると感激したんです。人々のやさしさとITを組み合わせれば、社会に役立つサービスが提供できるはずだと思い、アプリを開発しました」
日本中で高齢化が進む中、高齢者の行方不明者数も増加しています。2023年の行方不明者は過去最多の1万9,000人余り(警視庁)で、その多くは認知症の疑いがある方だとされています。
「幅広い地域で登録者数が増えれば、GPS配信機能を利用してエリアを特定し、目撃情報を集めることもできます。これまでも行方不明者の多くは地域住民によって発見されているケースが多いため、それを効率よくアプリでできれば発見の可能性も高くなるでしょう。高齢者だけに限らず、行方不明になったお子さんの捜索にも活用することができます」
高原さんは、アプリの多面的な活用方法を提示しながらさまざまな世代に登録を呼びかけ、「みまもりあいアプリ」を通じて福祉SNSの実現を目指しています。
「北海道では旭川市と提携してアプリ活用を推進しています。デジタル技術を活用して地域活性化を目指す政策『デジタル田園都市国家構想』が打ち出された際の公募で提携が実現したのですが、他の自治体ともどんどん協定を結んで、より多くの人と人とが助け合える世の中にしていきたいですね」

コミュニティやラジオで、孤独な認知症患者に心の拠り所をつくる

アプリはコミュニティとしても機能しています。80代に発症することがほとんどだと言われている認知症。しかし、60代後半や70代で認知症と診断される人も一定数存在します。その多くはネット上のネガティブな情報に頭を悩ませ、共感しあえる相手も見つけられず、孤独を抱えていることも...。
「『みまもりあいアプリ』を活用すれば、同じく若くして認知症を発症してしまった同世代の仲間や、認知症専門医などと匿名でつながることができます。匿名登録できるので詐欺に遭うこともなく、見ているだけでもOKなので精神的に脅かされることもありません。また、いいねボタンも閲覧回数の表示もありません」
また認知症患者と医師たちで構成されたコミュニティ内ではラジオ番組が制作され、2024年現在、その数は11番組。患者の体験談や医師の励ましの言葉で綴られたエピソードは500以上にも及ぶといいます。
「一貫して伝えているのは『認知症になっちゃっても大丈夫』というポジティブなメッセージ。他にも匿名性を生かした医師への質問コーナーや、アンケート機能を利用したものがあります。さまざまな方法で、高齢者を精神面でサポートし、居場所づくりに取り組んでいきたいと考えているんです」
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以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
みまもりあいプロジェクト 代表理事 高原達也さん
株式会社ベネッセコーポレーション約18年間在籍。主にいぬのきもち・ねこのきもち、女性限定サイトウィメンズパーク等の新規開発・新規プロモーションに携わる。 2017年「みまもりあいプロジェクト」事業開始。
みまもりあいプロジェクト

<ファシリテーター>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。