【レポート】介護オンライン相互勉強会「介護労働実態調査ダイジェスト&新たな介護情報基盤に向けた準備」
メルキタ介護
2024.12.05
ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は10月17日(木)に行われた「介護労働実態調査ダイジェスト&新たな介護情報基盤に向けた準備」のレポートをお届けします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。
採用率は増加、離職率は減少傾向。さらなる改善のヒントは?
あらゆる産業で人材不足が叫ばれる昨今。介護業界でも依然として従業員の不足が課題とはなっているものの、実のところ採用率は前回の調査と比較して増加傾向にあり、離職率は減少しつつあると神内さんは解説します。
「令和6年の介護報酬改定に基づいて、シフトの調整や有休取得促進、残業時間削減のための対策をとるなど、ライフワークバランスを重視した職場環境づくりに業界全体が取り組んできたことが採用率の増加につながったのだと考えられます。さらにハラスメント対策がなされたことによって、従業員が定着し離職率も減少している傾向にあるようです」
公益社団法人介護労働安定センターが行った「介護労働実態調査」によると、人間関係の向上が離職率低下につながったと回答した事業所は63.6%にもおよびます。一方、従業員側の調査内容を見てみると、「職場の人間関係に悩みや不安がある」という回答が63.7%と、依然として高い数字が見られます。
「特に上司や同僚との不和が多く挙げられています。従業員側からはハラスメント防止策がなされている事業所が支持されていますが、これは事後の対策ではなく、未然に防ぐための"防止策"である点を見逃してはいけません」
参考:公益社団法人介護労働安定センター 介護労働実態調査
2040年以降の人材難に対応するべく、情報のプラットフォーム化が進む
団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年以降、これまで以上に介護サービス需要は増大・多様化するといわれています。それに対して生産年齢人口は減少。介護業界の人材不足は今後、さらに大きな課題となることが予想されています。
「このような状況下で、ICT活用による効率的な介護サービス提供体制の構築、情報共有の促進、業務の効率化と介護サービスの質を向上させることは急務です。利用者さん本人、介護事業所、医療機関、自治体といった介護サービスに関わる関係者同士が情報を共有・活用するために整備された仕組みが『介護情報基盤』です」
この仕組みによってペーパーレス化することで、およそ97%の事業所が年間500時間以上の業務時間削減に達しているという結果も出ています。また情報共有を迅速化させることで、利用者情報が瞬時に関連機関へ共有できるため、判断ミスの削減、連携の強化が期待できるだけではなく、緊急時対応の精度向上にもつながると考えられます。
「今後はケアプランとLIFE情報の電子化、自治体向けの健康・医療・福祉情報連携ネットワーク、PMH(Public Medical Hub)の活用も検討されています。医療業界を追いかける形で、介護業界も情報のプラットフォーム化が進んでいくということです」
参考:社会保障審議会介護保険部会(第114回)令和6年9月19日資料
改善のキーはやはり、コミュニケーション
勉強会の後半では、参加者から相談や質問が寄せられました。一例を紹介します。
参加者A:最も大きな離職理由は上司や同僚との不和ということでしたが、皆さんの事業所ではどういった改善策をとられていますか?
参加者B:マネジャーや管理職のスキルアップが必要だと考えていて、普段から外部のものも含めて定期的に研修を受ける機会を設けたり、職場内で振り返りの時間をとったりしています。また一人ひとりと面談の機会を作り、些細なことだとチャット等へのレスポンスをきちんとするよう声を掛けています。
参加者C:やはりコミュニケーションに尽きると思います。普段の会話も大切ですし、大変ですが、四半期に一度はきちんと面談の場を設けるようにしています。また、何か起きたときは迅速に対応することを心掛けています。後回しにしたばっかりに不満が大きくなる...ということは、よくあると思うので。
参加者D:従来は6カ月に一度だった評価を3カ月に一度にすることにしました。とにかくいろいろな仕掛けを作って、管理側の人間が従業員と真剣に向き合う時間を作ることが大切だと思っています。
神内さん:大学には、学生が教員への質問や相談ができる「オフィスアワー」というものがあります。何曜日の何時から何時までと時間を決めて、従業員の質問や相談をマネジャーが受ける。マネジャーはその時間は必ず空けておくようにして、いつでも悩みを聞く体制を導入するのもいいかもしれませんね。
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。