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成功には共通点がある!?介護業界の人材採用・定着の最適解

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2025.04.14

mailkita_kaigo0417.jpg2024年12月、介護業界に衝撃が走りました。厚生労働省が公表した「介護サービス施設・事業所調査」の結果によると、2023年10月1日時点での各サービスの介護職員数は212.6万人。前年度と比べて2.8万人減と、初めて「減少」へ転じたのです。2040年には57万人の不足が予想されているという、もはや「待ったなし」の状況。しかし、職員の採用や定着に成功している事業所もあります。今回は複数の成功事例から介護現場における人材採用・定着の「最適解」を導いていきます。

人が集まる事業所の3つの特徴

全国の成功事例に共通するのは「多様な人材を受け入れる体制が整備されていること」です。具体的には次の特徴があります。

1.柔軟なシフト制度を導入
まずは雇用主側が「この働き方しか認めません」という固定観念を捨てた、多様な人の多様な働き方を許容する環境づくりを整えること。従来型の8時間労働制や雇用形態を見直しましょう。

2.明確なキャリアパス制度の整備
入職者が今後どんなスキルを積めば、どのような支援が受けられ、どんな待遇や展望があるのかが明確に分かる仕組みを整備しています。見通しがつくことで、働き手の将来の不安感をふっ拭することができます。

3.職員の成長=組織の成長につなげる
資格取得支援やキャリアマップの作成など、職員の成長=組織全体の成長につなげる仕組みづくりがポイントです。

具体的な成功事例

・短時間勤務制度で離職率10%以下に
社会福祉法人マザアス(東京都東久留米市)では一般的な8時間労働ではなく、3〜4時間だけ働く短時間勤務制度を積極的に導入。併せて有給休暇の取得促進にも力を入れた結果、離職率が10%以下まで下がりました。

・ICTの活用で業務効率化
SOMPOケア株式会社(東京都品川区)では、ICT活用で業務を大幅に削減。特に入居系ケアでは予実管理をデータ分析に基づいて行い、生産性向上と職員の時間的余裕を実現。見守り機器などの導入で夜間負担も軽減し、離職率の改善につなげました。

・外国人材活用で人材不足を解消
青森県社会福祉振興会では早い段階から外国人材を活用し、入職後も日本語教育と異文化交流の機会を実施。生活面のサポートや業務以外の「居場所づくり」で定着率向上に成功しました。

・個人の希望に合わせた柔軟な働き方
札幌のある事業所では、「夜勤が怖い」「運転が怖い」という求職者の声に対応し、個人の希望に合わせた柔軟な働き方を提供。「送迎のみ」「調理のみ」といった特定業務限定の短時間求人で、シニア層や女性からの応募を獲得しました。また「子連れ出勤OK」とすることで、保育園に入れない子育て世代からの応募も増加しました。

人材確保に向けた4ステップとは?

1.現状を「見える化」する
職員の年齢層や性別、社歴を把握した上で、自らの事業所にどんな強みがあるのかを整理。その上で「若手採用が難しい」「キャリアアップ制度が不十分」など、明確な課題を探っていきましょう。

2.受け入れるべき人材像を探る
どのような職員が不足しているか(夜勤可能な正職員、リーダー候補など)を明確にし、シニア層、主婦層、外国人労働者、学生などの中から、新たに受け入れるべき人材像を選定します。受け入れにあたっての課題と準備すべきことを事前に考えておくことが大切です。

3.明確な目標や期限を設定する
具体的な施策を1〜3つに絞り(外国人向け日本語教育プログラム、短時間勤務制度の導入など)、実行のための担当者・チームを明確にします。必要なコスト、時間、人材、ツールなどを把握し、「3カ月以内に○人確保する」など具体的な目標と期限を設定しましょう。

4.成果測定方法の設定
職員満足度の調査や採用・離職データの分析などで定期的に成果を測定します。その上で3で設定した「明確な目標」のための施策を見直し、継続的なサイクルで改善していくことが重要です。

まとめ

人材が集まる事業所になるためには、経営層の意識改革から始まり、多様な人材を受け入れる体制整備が不可欠。給与や待遇を大きく変えなくても、柔軟な働き方の提供や明確なキャリアパスの提示など、できることから取り組むことで着実な人材確保につながります。多様な人材を受け入れることは、人材不足解消だけでなく、職場の活力向上や業務成績の向上にもつながります。ぜひ自社の状況を見直し、取り入れられる施策から始めてみてはいかがでしょうか。

※この記事は2025年2月20日に開催したジョブキタオンライン勉強会の内容を元に制作しています。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。