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ドキッとさせられる!?介護職100名のリアルな「退職理由」(2020.7.21)

メルキタ介護

2020.07.21

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人手不足が叫ばれる介護福祉業界。「ようやく確保した人材が早期退職してしまった...」「やっと一人前になったと思ったら転職することに...」そんな経験をされた方も多いはず。少々「ドキッとさせられる」内容ではありますが、まずは「退職理由」を知ることから始めてみませんか?介護職の退職経験者100名に聞いたリアルな声をお届けします。


※以下のグラフは当社が運営する人材紹介サービス「ジョブキタ紹介」にご登録いただいた介護職の転職希望者100名にヒアリングし、集計したものです。

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今回の調査では、職場の雰囲気や上司・職場環境に対する不満など人間関係を理由とする声が最も多く、次いで給与面・業務量の多さが上位となっています。意外に多かったのは「出産・子育てに関する退職」という理由。またスキルアップという前向きな理由もありますが、その背景には残念ながら「現在の職場ではスキルアップできない」という判断があることも分かりました。


では、スタッフ定着のためにはどのような対策が望ましいのか、多く寄せられた退職理由からそれぞれを見ていきましょう。


【職場の雰囲気や上司・職場環境に対する不満】

・スタッフ間の人間関係がギスギスしていて、居心地が悪い。
・主任介護スタッフと合わない。直接自分がされたわけではないが、特定の人にあたりが強い。
・管理者が代わり仕事の進め方など大きく変わり、ついていけなかった。

スタッフ間の関係性が悪い・上司や管理者が合わない等、人間関係に関する理由が多いのはお察しの通りかと思います。人間関係はとてもデリケートで難しい問題ですが、特に直属の上司(主任やリーダー)との関係に悩む声はとても多く、その相談先がないまま退職に至るケースが見受けられます。
経営者や管理者など俯瞰的に見られるポジションの方が定期面談を行い現場の状況把握を行ってみてはいかがでしょうか。


【給与面】

・入所からデイサービスへ異動になり、夜勤手当がなくなったことで大きな収入ダウンに。
・夜勤専従スタッフを採用したことで夜勤回数が減ってしまい、稼げなくなった。
・総支給はそれほど低くないが、基本給の金額設定がとても低く「賞与2カ月分」が実際支給されると基本給の2カ月分で少なく驚いた。

「給料が他施設より低い」という声が最も多かったですが、上記のような声も印象的でした。
異動に伴う収入ダウンが予想される場合や、新たなスタッフを採用することで既存スタッフの収入に影響が出る場合には「キープしたい夜勤回数」など、日ごろから各人の状況を聞き取り、把握しておくことが重要です。また採用時に月給だけでなく賞与を加えた想定年収の説明をプラスすることで、収入面を理由とした早期退職防止につながるかもしれません。


【業務量・内容についていけなかった】

・看取りが続き、精神的に参ってしまった。看取りに対するスタッフのケア
・気持ちの持ち様など教育があれば違ったが...。
・管理者になったが、人の管理が中心の仕事に負担感が強く、自分のやりたいことは現場での介護業務なのだと再認識した。
・経験のある施設形態とは異なる「サ高住」に入職したが、他施設の経験があるからと「経験者」として扱われ、十分な指導が受けられなかった。
・業務内容や時間の使い方が前職とは全然違い、なじめなかった。

管理職や役職者を目指したいという方もいれば、逆にそれが負担に感じる方がいることも事実。それぞれのキャリアプランの共有も重要ですね。また、施設形態や介護ケア方針など、それぞれの施設特徴を入職前に説明し、良いことだけではなく、大変と感じるであろうことも丁寧に伝えることでミスマッチを軽減できそうです。
さらには経験者であっても「新しい職場に入る上では新人」ととらえ、丁寧な導入研修・指導体制をとることで安心感がうまれます。「看取り」を理由とした精神面の落ち込みを理由に挙げる方も複数いらっしゃったのが印象的でした。


【出産・子育てに関する退職】

・産休や育休取得の実績がない施設で、良い顔をされなかった。
・正社員として勤務していたが、産後夜勤が出来ない場合はパート待遇になってしまうため夜勤なしでも正社員になれるデイサービスへ転職。
・子どもが夜勤に行くことを嫌がったため夜勤なしでの勤務希望を相談したがかなわなかった。

介護業界に限らず、女性の産休・育休取得実績がない事業所もまだまだ多い現状。申し出があった時にスムーズに対応できる準備が必要と感じます。
また職探しの時に「産休育休制度が充実しているか」を重視している女性も多くなってきています。自分からは聞きにくい方もいるので、面接時に産休育休制度の受け入れ体制が整っていることをアピールできると好印象につながります。
また職場復帰後、夜勤なしでも正社員として働けるような環境づくりも今後は求められてくるでしょう。


【勤務条件に対する不満】

・シフトが細かすぎて体調管理が難しかった。
・休みが4週8休以上の施設が増えているのに、4週6休制が改善されなかった。
・有給休暇が突発的な病欠の時にしか使えない。子どものいる方には優先的にとらせているのに...。

細かいシフト制での働きにくさをあげる方が非常に多く、運営側が考える「現場をうまくまわすためのシフト設定」が働き手にとっては負担になってしまっている印象です。体力仕事の多い介護職だからこそ休日面が退職理由へつながることも多く、職探しでは有給消化率を気にする方も。有給消化を推奨したり、スタッフ間で平等に取得できる配慮があると良いでしょう。


【スキルアップ】

・ケアマネ資格を取得したが、現職ではポジションがなかった。
・スキルアップのためにさまざまな施設形態を経験したい。

ケアマネ資格取得を機に転職される方がとても多い印象です。先任者がいるためケアマネとして従事させることができないのは当然です。
例えば複数施設を運営されている法人様であれば、ケアマネや相談員など新しい業務への転換希望や他施設での勤務希望などを把握しておいたり、グループ施設で欠員が出た時に優先的に異動打診を行うなど、キャリアを途切れさせない体制づくりも効果的です。


【その他】

・60才定年制でその後は、同じ業務を行うのに給料が大きく下がってしまうため。
・業務に使用するマスク・手袋が自前。

定年後の待遇面を挙げた方が複数。人手不足であり70代の方も活躍する業界だからこそ、定年後の待遇面の検討が必要な局面と感じます。また上記備品類だけでなく、制服がない場合の被服手当・制服のクリーニング手当などの導入は少額であっても効果的です。


待遇面や制度などすぐには改善できないことも多いですが、「現場スタッフの要望をヒアリングし、改善に向けて取り組もうという姿勢」だけでも、スタッフにとってはモチベーションアップにつながります。
採用にかかる費用や教育に要する時間を考えると、入社後のミスマッチ・早期退職は最も避けたいことであり、面接時にその方の重視したいことを丁寧に聞くこと・それに答えることが防止への第一歩と感じます。
今回最も多かった理由が「職場の雰囲気」だったことからもわかるように、働くスタッフや利用者様の様子を面接時に十分な見学時間を設けて求職者に伝えるのが重要なポイントではありますが、現状の新型コロナウイルス禍では当面、見学対応は難しいかと思います。そのため求職者からは「職場を見ずに入職を決意するのは難しい」という声も挙がっていますが、それに応えるために「職場内の写真や動画を面接時に見せる」だけでもとても効果的です。
入職への背中押しに、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?