【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会「まだ間に合う!小さく始めようBCP対策」
メルキタ介護
2023.03.02
ジョブキタの主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回のテーマは「まだ間に合う!小さく始めようBCP対策」と題して、令和6年までの策定が義務付けられているBCP(事業継続計画)について学ぶ会を開きました。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。
完璧を目指さず、まずは手を付ける
BCPは令和3年(2021年)度の介護報酬改定で発表されたものの、策定に時間がかかるという事情から当初より3年の猶予期間が設けられていました。しかし義務付けとなる令和6年(2024年)4月まで残すところ約1年。まだ策定をしていない事業所からは「どこから手を付けていいのかわからない」といった声も聞こえてきます。
そんな事業所に対し、神内さんがお勧めしているのは「はじめから完璧を目指さないこと」。質を優先すると、スピードと量が追いつかないため、まずは「スピード」を優先させて量をこなし、質を高めていく方法を採用するべきだとレクチャーします。
「策定を早期に終えている事業所はこうしたやり方を取り、とりあえず手を付けてからブラッシュアップするという方法をとっています。まだまだ策定が終わっていない事業所は、まずは簡単なところ、小さなところから手を付けることが必要です」
4つのルールを守り、法人全体で実践する
改めてBCPとは何かを考えるにあたり、踏まえておきたいのが一般的な災害対策との違い。
「一度きりの避難で完了する災害や、1昼夜で処理が完了するようなノロウイルス等と違い、1カ月、1週間、もしくは新型コロナウイルスのように数年単位にも及ぶようなことがあります。その中で、『どう事業を再開させるか』『継続していくか』を想定するのがBCPです」
またBCP策定には「委員会の設置」「(感染・災害への)指針の策定」「研修等の実施」「訓練(シミュレーション)の実施」という4つのルールが定められています。神内さんはそれぞれのポイントを講じた上で、「策定はゴールではない」と強調。
「今回定めるのは体制づくりであって、実際に運用されなければ意味がありません。PDCAサイクルのようにこの4つを定期的に見直したり、実行したりする必要があります」
どこまでの災害を想定し、何を優先するのか?
後半のディスカッションでは参加者から事例や質問が寄せられました。一部を紹介します。
Q.災害対策における指針では、どこまでの災害を想定しておけば良いのでしょうか?
A.あくまでサービスを継続できるまでが想定する範囲です。人命を第一に、利用者の生活と職員の雇用を守ることが条件ですので、国家レベルの災害や有事など、そもそもの生活や業務ができない状況までを想定する必要はありません。
Q.居宅型、訪問型などさまざまな事業体を運営しています。BCPは統一したほうが良いのか、事業所ごとに策定するべきか、どちらがよいのでしょうか?
A.事業体ごとに作ったルールを統一させるよりも、統一ルールを作り事業体ごとに最適化していくほうが、はるかに労力がかかりません。
Q.複数の事業体を持つ場合、どの事業所、どの業務を優先すべきなのでしょうか?
A.優先事項は人命を第一に「社会的影響」と「収益」の2つを基準としてそれぞれが判断することとしています。例えば、特養老人ホーム、訪問事業所、通所事業所があった場合は、介護サービスが必要な利用者が多く、収益も大きな居住系である特養が優先となります。ただし、訪問や通所はサービスを停止して良いわけではありません。すべての事業所を継続するための方法がBCPです。
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人北海道社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。