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【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会 「費用をかけないICT導入と失敗しないための準備」

メルキタ介護

2023.04.11

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毎月、ジョブキタ主催で開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は3月16日(木)に行われた「費用をかけないICT導入と失敗しないための準備」の様子をレポート。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。

そのAI、ICTは本当に必要ですか?

近年さまざまな分野でAIやICTの導入が進み、介護の世界へも次第に広がりを見せています。しかし「みんなやっているし」「導入さえすれば、さまざまな問題が解決する」という思い込みも見られると神内さん。まず「AI・ICTは万能の魔法の杖ではない」と説明します。
「AI・ICTはあくまで課題を解決するための道具。導入を目的にしてはなりません。導入前にはまず必ず自分たちが抱える課題と、その解決のためにどんな方法が考えられるのかをしっかりと洗い出すことが大切で、その上でどこをAI・ICTに置き換えられえるかを検討しましょう」
かつてのAI・ICTは「アナログからデジタルへの転換」が中心だったのに対し、現在では、さらにデジタルデータをインターネットにつなげてクラウド管理するまでが1セットになっている、というのが神内さんの説明。
デジタル化やAI・ICT化を一度進めて仕事のやり方を変えると、元に戻すのは非常に難しいことを理解した上で「本当に必要なAI・ICT化を進めてほしい」と話しました。

導入前に知っておくべきこと

多くの事業所が慢性的な人手不足に悩む中「機械ができることは機械に任せること」には大きな意味があると言えるでしょう。厚生労働省の調査結果によるとICTの導入で「業務上の単純なミスが減った」「業務が効率化された」「記録に要する時間が削減された」など、さまざまな効果があったことが報告されています。

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一方、メリットはすぐに実感できるものではないと神内さんは解説。
「スマホや車などを買い替えた直後、一時的に『前のもののほうが使いやすかった』と感じた経験は多くの人が持っているはず。忘れてはいけないのは、どんなシステムであっても新しいものを導入した直後は必ず一時的に効率や生産性が落ちます。一時的な効率低下があるとあらかじめ理解し、効果を感じられるまでの時間・機会を確保する余裕を持った上でシステムを切り替えましょう」

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デジタル化以前にできることはまず実践。抵抗なくできることからスタートを

勉強会の後半では、参加者から実体験を踏まえた感想が述べられました。一例をご紹介します。

参加者A:以前の職場ではタブレット端末やICTを導入していたけれど、今の職場では全くなくICTの便利さを実感している。経営者・管理者が実際に使い、メリットを体感していないと部下には勧められない。まずはわかる人が使って見せていくことが大切だと思う。

参加者B:デジタル化は一気に進めないといけないものだと思い込んでいたが、段階的に進めるのもありだと学んだ。まずは少し試して目の前の人材不足を解決し、楽しく介護ができるよう改善していきたい。

参加者C:高齢スタッフが多いこともデジタル化の妨げになっていると思う。デジタル化には停電時などへの不安もある。データのバックアップも重視したい。

これらの声に対して神内さんは「必ずしもデジタル化しなくても『3M5S(ムリ・ムダ・ムラの削減、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの実践)』だけでも大きく環境は改善される。スマホやタブレットの使用に抵抗がある高齢スタッフには、まずはゲームやChatなどで親しんでもらってみては」とアドバイスしました。

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。