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【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会「どう変わる?令和6年介護保険法改正」

メルキタ介護

2023.02.07


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毎月、ジョブキタ主催で開催している「介護事業所向け オンライン相互勉強会」。今回は「どう変わる?令和6年介護保険法改正」と題して、12月20日社会保障審議会介護保険部会における『介護保険制度の見直しに関する意見』の概要をレポートします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。北海道アルバイト情報社・ジョブキタ紹介でキャリアアドバイザーを務める1名も参加し、質疑応答に加わりました。

2022年12月20日「社会保障審議会介護保険部会」において意見書を取りまとめ

2024年の介護保険制度改正に向けた準備が進んでいます。その一環として22年12月20日、厚生労働省で行われた社会保障審議会介護保険部会において「介護保険制度の見直しに関する意見」の取りまとめが行われました。今後の介護福祉制度の予想図ともなる部会の概要について、神内さんが解説していきます。

厚労省が進めるのは「ベーシック」の強化と生産性の向上

まず今回の意見書の概要は次の通りです。

Ⅰ 地域包括ケアシステムの深化・推進
1.生活を支える介護サービス等の基盤の整備
2.様々な生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現
3.保険者機能の強化

Ⅱ 介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保
1.介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進
2.給付と負担


ざっくりと流れを解説すると、このようになります。

地域包括ケアシステムの深化・推進は2025年がゴール。次のテーマである地域共生社会の実現につなげていくためには、保険者の機能が重要になる。その一方で働き手は減り続けているため、ICTを取り入れ少ない人数で回すよう生産性を向上させていくことが必要だ。国民による自助努力で、地域の持続力を上げていく必要もある。

このなかで特に介護に携わる人たちの間で話題となっていたり、注目すべきだったりといったポイントには次のようなものがあります。

○Ⅱの2「給付と負担」
「保険料負担のあり方」「利用者負担が2割となる対象の拡大」で意見が分かれ、持ち越しとなりました。これは介護保険制度開始以来、前代未聞の事態です。引き続きの議論が注目されます。

○Ⅰの1「生活を支える介護サービス等の基盤の整備」
訪問や通所など複数の在宅サービスを組み合わせて提供する複合型サービスの新設が検討されています。一例として、コロナ禍で臨時的に認められた「デイサービス職員による訪問介護」の制度化などもあるかもしれません。
厚労省が進める「データヘルス改革」と連動し、マイナポータルで電子カルテや介護情報が閲覧できる仕組み、介護事業者間で情報共有できる仕組みの実現を目指します。

○Ⅱの1「介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進」
都道府県主導のもと、さまざまな支援・施策を一括して取り扱い適切な支援につなぐワンストップ窓口(仮称「介護生産性向上総合相談センター」)を設置する計画です。
介護ロボットやICTの活用は引き続き進められ、単体よりも「パッケージ化」に重きが置かれる方向となります。

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▲厚生省がすすめている「データヘルス改革」の工程

今後の経過は厚労省ホームページ、解説サイトなどで確認を

質疑応答の時間では、神内さんとHAJの社員、更に参加者も交えて議論しました。一例をご紹介します。

Q.介護保険法改正へ向けた議論は、何を見れば経過が分かりますか?

A.基本的に厚労省のホームページ。「社会保障審議会」ページ内の「介護給付費分科会」「介護保険部会」などを開くと情報が見られます。
ただし、公的文章のためわかりにくい箇所も多いため、ネットの解説記事も参考になります。それぞれのサイトごとに立場やとらえ方が異なるため、一つのサイトだけでなく複数の記事を見るようにするのがおすすめです。

Q.2024年の法改正に備え、各事業所ではどんな準備をしておくべきでしょうか。

A.事業所によって異なるため一概には言えませんが、報酬加算に関して言えば、多少ハードルがあっても取れるものは頑張って今のうちに取っておくのがよいと思います。現在「加算」扱いでも、今後は基本報酬(ベーシック)に組み込まれていくであろう要件もあります。今のうちに取っておかないと、改正後には上位加算の認可が難しくなる場合もあるでしょう。

.コロナ禍以来、事業者への実地指導が厳しくなったように感じています。今後さらに厳しくなっていくのでしょうか。

A.実施指導は、運営者による差が大きいことや細かすぎる指導の弊害が指摘されています。今後は国が標準指針を示し、ベーシックなものに収れんしていく流れが見込まれます。今後の実地指導では、細かい個別案件よりも「ケアマネジメントがしっかりできているか」「組織としてガバナンスが取れているか」などが重視される方向なのではないでしょうか。

 

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人北海道社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。