【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会「要配慮個人情報の取り扱い」
メルキタ介護
2022.11.04
介護業界における課題解決を目指してジョブキタが開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回のテーマは「個人情報の取り扱い」について。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。
現場で当たり前に扱っている情報にも配慮を
「多くの利用者を抱える介護事業所では、当たり前のように利用者の個人情報を扱っています」と神内さん。なかでも気を付けなければ利用者に不利益をもたらす情報は「要配慮個人情報」として法律で定められていると解説します。
該当する情報とは大まかに「符号」と「記述」の2つに分けられます。以下は符号の例。
「ここに表記されているものは、番号が表記されているだけで個人情報です。むやみにコピーをとったり、FAXやメールをしたりといった行為は避けなければなりません」
さらに注意が必要なのが「記述」です。取り扱う文章中に以下に関する記載がないか注視する必要があります。
○人種 ○信条 ○社会的身分 ○病歴 ○犯罪の経歴 ○犯罪の被害にあった事実 ○身体障害・知的障害・精神障害等があること ○健康診断等の結果 ○保健指導・診療・調剤に関する情報 ○逮捕・差押えなどの刑事事件に関する手続が行われたこと(犯罪の経歴を除く) ○少年の保護事件に関する手続きが行われたこと ○ゲノム情報
「特に、障害や健康診断の結果、保健指導や調剤などは当たり前のように我々が取り扱っています。しかし本来は、こうした情報は取得すること自体に注意が必要です」。
介護報酬と同じく、3年ごとに見直し
では「要配慮個人情報」が必要になった場合、どのように取得したら良いのでしょうか。
これに対して、要配慮個人情報を取得する場合には、原則として本人の事前同意が必要となります(個人情報保護法20条2項)
「この通り、本人以外から聞くのは禁止されています。ただし例外的に同意が必要ない場合もあり、例えば病状により本人と意思疎通が取れない場合、第三者から取得することは許されています」
最後に個人情報保護法は介護報酬と同じく、3年おきの見直しがあると解説。その背景には近年デジタル上のマーケティングとして個人情報を取得したり、SNSの発展等により個人情報が国境を越えて行き交ったりという事情があると話します。「今後ますます規制が厳しくなる恐れがあるので、介護報酬と同じく、各自注視が必要です」とまとめました。
トラブルを防ぐため、面倒でも厳しい規定を
後半のディスカッションでは、参加者それぞれの体験談を交えての相談や質問が行われました。その一部を紹介します。
参加者A:個人情報の取得に関する同意は都度、確認したほうが良いのでしょうか。それとも、一度取得したら数年有効など決まっているのでしょうか。
神内さん:トラブルを防ぐために、用途ごとに同意を交わす必要があります。
参加者B:小さな町で事業所を営んでいますが、噂がすぐに回ってしまい、近隣の住民から「あの人、入院したんだって?」と聞かれてしまいます。
神内さん:小さな町であれば仕方がないという気持ちも理解できます。しかし「規則で答えられない」と毅然と対応する事も必要です。
参加者C:利用者だけでなく、過去に退職した職員の写真や文章がSNSやブログに記載されたままのケースがあります。
神内さん:個人情報保護法は利用者だけのものではありません。労力はかかってしまいますがトラブルを防ぐために、要配慮個人情報には該当しない情報も「要配慮」の規定に合わせ同意を得て扱うよう心がけましょう。
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人北海道社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。