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【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会「第8期介護報酬改定から1年の振り返り」

メルキタ介護

2022.04.27

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介護業界の課題解決を目指してジョブキタが毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は2021年の介護報酬改定から1年が経った総まとめとして、現状報告や介護の課題について活発な議論が行われました。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。

高齢者人口の激変へ向けた準備運動

神内さんはまず令和3年度介護報酬改定を振り返るにあたり「今年の初め、ついに札幌の人口が減少に転じたというニュースが流れました」と話を切り出します。
「日本全国、2040年にかけて高齢者人口がこれまでにない次元で増え続け、介護の担い手が減る事が既に確定しています。今回の改訂は1960年代から始まった介護報酬制度が2040年に向け完全に生まれ変わる岐路です。方向性を見定めながら準備を進めていきましょう」

  1960年代の介護
(報酬制度の成立時)
2040年に目指す介護
利用世帯 戦中・戦後の利用者(家族) 団塊の世代
経済情勢 復興・高度経済成長 安定成長・成熟期
社会制度 国主体の社会保障制度 保険制度・共生社会
目的 「お世話型」介護 尊厳の保持・自立・重度化防止

在宅や福祉施設で看取るケースが増加

続けて人口推移だけでなく、入院患者数や場所別の死亡者数にも着目してほしいと神内さん。
「かつては亡くなる方の8割近くが病院でしたが、介護施設が増加し、病床数が減った事で徐々に減少傾向にあります。更にコロナ禍では病院や福祉施設に入居できなかった背景から、在宅医療や在宅介護という形が今まで以上に進行しました。福祉施設での看取りや在宅で亡くなるケースは、今後ますます増えることが予測されますみんなが元気に、いわゆる"ピンピンコロリ"と亡くなる訳ではないので、福祉の現場でもどうサポートしていくかが課題となるでしょう

場所別死亡者数単位:万人

  2000 2005 2010 2015 2019
総数 96.2 108.4 119.7 129.1 138.1
医療機関 77.9 89.3 96.1 98.8 100.7
自宅 13.4 13.3 15.1 16.4 18.8
老健 0.5 0.7 1.6 2.9 4.1
老人ホーム 1.8 2.3 4.2 8.2 11.8
その他 2.7 2.8 2.8 2.8 2.6

housyu1.jpg出典:厚生労働省「令和2年度(2020年)人口動態統計」

コロナ禍で見直しが進んだ声も

今回は参加者それぞれがこの1年を振り返り、現状を報告。神内さんがアドバイスを行いました。一部を紹介します。

参加者A:昨年から続くコロナ禍の影響で、他事業所と情報共有できる機会や、体を動かして仕事を覚える機会が減り、若手職員の教育が進んでいないと実感しました。

神内さん:オンラインでは現場よりも管理者向けの研修が多く、特に若手向けがないのは今後の課題。この勉強会も含めて対応していきたいと思います。

参加者B:コロナ陽性者が出て、対応に追われた1年。一方でBCPの策定を進めようという機運が強まり、緊急時の人員配置を見直す事ができました。

神内さん:BCPは一見して人材不足と関わりがないように見えますが根は同じ。「いかに少ない人で運営可能にするか」というマネジメントが含まれています。コロナ禍が見直す良い機会になったと言えるでしょう。

参加者C:ケアハラへの対策については毎朝の打ち合わせで職員それぞれが発表するように、また職員間のパワハラ対策は、すぐに報告できる環境を作りました。しかしマニュアル化まで進んでいません。

神内さん:マニュアル化で重要なのは、職員が入れ替わった時にその状態が維持できる事です。スマホで撮影した動画や写真でいいので、残しておく事が今後につながります。

参加者A:ケアハラに関してこの1年で「我慢して当たり前」の風潮が変わりました。職員間については上司やケアマネからの指示をプレッシャーだと感じる若手もいたので、相談しやすい環境づくりにも取り組んでいます。

神内さん:ケアマネからの指示がプレッシャーというのは盲点でした。今後ケアマネとも情報交換を重ねていきたいですね。

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人北海道社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のため、介護経営のコンサルタントとして、講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。