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【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会 「介護人材育成 中堅スタッフ編」

メルキタ介護

2022.04.04

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介護業界における人材課題の解消を目指してジョブキタが開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さん。スタッフの離職が事業所にとってもリスクであることはこれまでのセミナーでも繰り返し述べられてきましたが、今回は特に経験を積んだ「中堅スタッフ」の定着がテーマとなりました。

社会やキャリア発達の形の変化を意識

経験豊富で能力の高い中堅スタッフや中間管理職は、事業にとってのハイパフォーマーです。彼らを失うというだけで、事業所が大きなリスクを抱えることになります。神内さんは中堅スタッフの定着のためには、「キャリアの発達段階」が従来とは変わってきていることを意識すべきである、と指摘します。

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現在は学校卒業から定年まで一つの職場で勤める人は少なく、特に介護業界においては転職、中途入社の人が数多く存在します。つまり「確立」の段階にある「前半」「後半」の部分を、30~50代で何度もやり直す人が増えているというのです。

そのため、従来の感覚で「この年代のスタッフにはこの対応」というように年齢に合わせた対応をするのではなく、その職場での勤務年数を意識した対応が重要になると神内さんは話します。

働き方のベースは「組織」よりも「個」

それに加えて、個人が組織に合わせていた時代は終わり、「個」が重視される時代へと社会が変化していることも忘れてはならないと神内さん。働く人たちが「『個』として組織とどう付き合うか」を主眼に置く時代になっていることを意識すべきだと話します。

伝統的キャリアと現在のキャリア観


  伝統的キャリア 現代のキャリア
(プロティアンキャリア)
主体 組織 個人
重視する価値観 昇進、権力、裁量権 自由、成長
求める成果 地位、給料 心理的成功、満足感
重要なアイデンティティ 組織に対して自分は何ができるか 自分は何がしたいのか


このような時代の変化を踏まえ、型にはまった一定のキャリアパスではなく、一人ひとりの希望や価値観に合わせた柔軟なキャリアパスを用意することが大切です。

そのための対策の一例として「1on1面談」の実施を挙げ、「現在」と「未来」、「仕事(事柄)」と「人(個人の内面)」という4要素を掛け合わせてヒリングを行うことを神内さんは提案しました。

「1on1面談」のメリットと今後の課題

後半のディスカッションでは、具体的な面談内容について参加者からさまざまな意見や質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

参加者A 異性の場合「1on1面談」でプライベートな質問をするとハラスメントにあたる可能性を感じ聞きにくいこともあります。どう解決すればよいでしょうか。

参加者B 信頼関係が大切なのだと思います。異性、同性を問わずに質問ができるような間柄となれるようコミュニケーションを重ね、長期的視点で信頼関係を構築していくことが解決法なのではないでしょうか。

神内さん 性別だけでなく、外国人、障害者、就労未経験者、LGBTなど、雇用人材は今後ますます多様化していくことが考えられます。さまざまなケースに対応するためにも、相手と対等な視点に立って価値観を認め、向き合う姿勢を持つことが大切なのではないでしょうか。

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参加者C 毎月「1on1面談」を実施していますが、仕事や業務の話がほとんどで、なかなか将来の話ができません。どうすればいいでしょう。

参加者D うちでは社員アンケートも併用して本音を聞き取るよう努めていますが、職場の環境改善などの要望がほとんど。将来の話、内面の話を聞きだすのはなかなか難しいものだと感じています。

神内さん 安全性、快適さを含め、労働環境に対する働く側の要求は昔に比べて大きいものとなっています。5年後、10年後にどんな組織にしたいのか話し合う場などを設け「会社の将来を共に作り上げる」という経験をさせるのも効果的だと思います。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人北海道社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のため、介護経営のコンサルタントとして、講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。