【レポート】オンライン相互勉強会「第9期介護報酬改定の方向性中間報告共有会」
メルキタ介護
2023.10.27
ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は10月19日(木)に行われた勉強会「第9期介護報酬改定の方向性〜中間報告共有会」のレポートをお届けします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。
最新テクノロジーの活用と規制緩和で人員配置基準が変わる?
2024年に行われる第9期介護報酬改定に向け、議論が進められています。
3年に1度の介護報酬制度改正は事業所の運営やサービスの根幹にかかわる大きな機会です。その内容は公表まで窺い知る事はできませんが、あらかじめ情報を知っておくことで円滑な対応ができるかもしれません。今回は改正でどのような変更が行われるか、神内さんによる見立てで解説していきます。
まず、背景として押さえておきたいのが社会保障審議会や同会介護保険部会で議論された内容です。
「長らく2025年の地域包括ケアに向けての議論や改定が行われてきましたが、審議会ではすでにその次のターニングポイントである2040年に向けた計画が進んでいます。現在のプランで着目したいのは以下の項目です」
【医療・福祉サービス改革プラン】
(a)ロボット・AI・ICTの実用化推進、データヘルス改革
(b)タスクシフティングを担う人材の育成、シニア人材の活用推進
(c)組織マネジメントの改革
(d)経営の大規模化・協働化
神内さんが注目するのは(b)の「タスクシフティング」について。
「介護助手はこれまで清掃やベットメイキングなど利用者の身体に触れない範囲が前提でしたが、今後は軽介護ができるようシフトしていく可能性が高いと見られています。(a)に記された『ロボット・AI・ICTの実用化』と組み合わせ一定の効果が得られた場合、将来的にいわゆる『施設系』の人員基準が三対一から四対一に緩和される可能性も高いでしょう」
12年ぶりに在宅系に新サービスが登場
次に神内さんが取り上げたのは、在宅系では12年ぶりの登場がうたわれている新しいサービス形態。
「言わば訪問介護と通所介護の複合型事業所が検討されています。現状の『小規模多機能型事業所』は施設ケアマネージャーが配置されているため、他法人からの紹介を受けにくく、普及が進んでいない。さらに訪問系は有効求人倍率15倍前後という人材不足の状況にあります。そこで通所介護がコロナ禍特例のように介護士を派遣し訪問を行える形にすることで、在宅介護をより受けやすい体制が構築される予定です」
その他、次のような検討事項も紹介しました。
◎財務諸表の提出の義務化
◎施設の基盤整備の必要性
◎全サービス形態にLIFE(科学的介護情報システム)適用
◎介護事業所の管理者がテレワークが可能になる
◎事務負担軽減に向けた報酬体系の簡素化(サービスコードの整理)
今後は規制緩和と機能の拡張がカギに
勉強会の後半では、参加者から相談や質問が寄せられました。一例を紹介します。
参加者A:訪問介護は無資格でできるようになる?
神内さん:できるようにはなりません。ただし、特定技能などの在留資格を持つ優秀な外国人人材が、介護福祉士などを取得して現場で働けるようになる可能性も検討されています。
参加者B:多様化した事業所の差別化をはかろうと、時期改訂後の3年間が「お試し期間」とされている気がします。保険料も自己負担も上がるからこそ、事業者もきちんとしたものを求められているのではないでしょうか。
神内さん:国としては事業所数を減らしたい訳ではありません。ただし方向性として加速度的に増えてきた小規模事業所の経営体質・事業継続力を強化するため、事業所を大規模化させたいという傾向にあります。
参加者C:新設される「訪問介護と通所介護の複合型事業所」のイメージが付きません。小規模多機能との違いは?
神内さん:前提として現状、介護業界では訪問介護員が少ない点と、通所介護事業所がコロナ禍で利用者が減ったまま戻ってきておらず経営的に厳しい点が課題となっています。小多機は「宿泊」機能が必要ですが、新サービス形態では必要なく、より開設のハードルが低いのが特徴です。通所事業所が訪問機能を追加することで、双方を解決することが狙いとみられています。
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。