【レポート】介護オンライン相互勉強会「スタッフの成長支援事例共有会」
メルキタ介護
2023.11.29
ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は11月16日(木)に「スタッフの成長支援事例共有会」として、創意工夫で人材育成に取り組む3つの介護事業所が発表を行いました。ファシリテーターを務めたのは、ふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。
「ミドル世代の進化論」
中標津朋友会 特別養護老人ホームりんどう園施設長 犬伏善則さん
はじめに登壇したのは中標津朋友会の犬伏善則施設長。自身もミドル世代である犬伏さんは、職員の管理をするにあたり、前提として人それぞれの「価値観の違い」を意識するべきだと解説します。
「例えば、私の世代では学校で失敗をすると先生に叩かれるのは当たり前。また若いころの上司が始業1時間前には出社している姿を見ていたことから、私も同じ習慣で働いています。今、私が上役から『始業時間ぎりぎりに出勤せよ』と言われてもできないのと同じように、若手も1時間前出勤はできないはず。管理職はこうした価値観や習慣を若い職員に強制してはなりません」
その上で、ミドル世代には「言わなくても分かる」という態度で部下と接するのではなく、自らできちんと「伝える」ことを心がけてほしいと説明します。
「普段から部下に対する心配り、気配りをきちんと言葉にしているか。受け手の目線になって、マイナスに捉えられないよう伝えているか。何より、『育ってほしい』という思いを伝えられているか。こうした伝える努力の積み重ねこそ、部下から信頼されるミドル世代へと進化を遂げるきっかけとなるでしょう」
最後にナイスミドルの定義について「仕事に積極的に取り組み、好感を持たれるよう努力し、清潔感のある外見を持つ」と述べ、「私もナイスミドルになれるよう頑張ります」と会場を沸かせました。
「成果発表会で社員たちの輝きを」
株式会社ファミリーケアサポート 代表取締役 田中卓さん
続いて登壇したのは、留萌市を拠点に複数の介護施設を運営する株式会社ファミリーケアサポートの田中代表。同社が行っている社内成果発表会についての事例を発表しました。
クレドとはラテン語で約束や信条を表す言葉で、企業理念にあたるもの。これを深く浸透させるために始めたのが年2回、オンライン上で全職員参加で行っている「クレドアワード」という成果発表会です。
はじめに「そもそも介護事業所における『成果』とは売上、利益、稼働率、利用者様の登録数のどちらだと思いますか?」と問いかける田中代表。
「私たちは成果を『利用者に起きた良い変化』とし、自らの行いで利用者様の幸福を実現したことと定義しました。クレドアワードでは職員たちが簡単な動画をつくり『左脚の骨折からのリハビリに成功』といった事例を発表します」
この取り組みを始めたきっかけには、介護福祉は社会から「当たり前」として捉えられ、スポットライトが当たりにくい世界であることがあるのだそう。
「部下のモチベーションを下げるのは簡単ですが、上げるのは難しい。私たち管理職の役割はスポットを当てる仕組みをつくることで、モチベーションを高めてあげることだと思います。社員たちの働きをきちんと評価し、一人ひとりが輝ける事業所を作りましょう」
「メンバーを巻き込んだ構造改革」
特定非営利活動法人ステップバイステップ 理事長 萩原康大さん
最後に登壇したのは札幌市で児童発達支援事業所などを展開する特定非営利活動法人ステップバイステップの萩原理事長です。同法人は設立から20年を迎えたことを機に萩原さんが理事長に就任しました。
「実はそれまでの当法人は問題が山積している状況でした。例えば事業の方向性が不明瞭であるため、リーダーのやりたい福祉が各事業所の方向性になっている問題。さらには現場の人間が育たず辞めてしまう問題が発生していました」
萩原さんが現場改革で意識したのは、自らが積極的に引っ張る従来型のリーダーシップではなく、部下たちに奉仕するように信頼関係を築いていく「サーバントリーダーシップ」。
「自分は元々、他業種からの入職であり福祉の現場経験が長いとは言えません。だからこそ皆に積極的に助けを請いた結果、『私たちも頑張らなきゃ』と皆が手を挙げてくれて、それぞれのモチベーションを上げることができたと感じています」
さらに部下たちを巻き込みながら法人理念の明確化、管理職をはじめ職務の明確化などを続けていった結果、コアとなる人材の離職防止や組織構造の安定化につながったのだそう。一連の改革を経て「困ったときに助け合う社風が醸成された」と振り返ります。
「ドラッカーの引用ですが、『組織は、マネジメントという骨格を持つように変身しないかぎり、失敗を重ね、停滞し、坂を下りはじめる』。このことを管理職のみなさんに意識して、部下たちと一緒にマネジメントにあたってほしいと思います」
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。