【レポート】介護オンライン相互勉強会「リーダー・中堅職員の研修事例共有会」
メルキタ介護
2024.01.31
ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は1月18日(木)に行われた「リーダー・中堅職員の研修事例共有会」のレポートをお届けします。ふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんをファシリテーターに、朝日ベストライフ株式会社で人事・広報を担当する船越谷(ふなこしや)百花さんが登壇し、成功事例を発表しました。
若手の離職を解決するキーワードは「中堅」
船越谷さんが朝日ベストライフへ入社したのは約3年前。当時は人手不足が深刻化しており、教育・研修も不十分。一部の事業所ではパワーハラスメントが発生している現場もあり、若手が入社しても続かないという事態に陥っていたと振り返ります。悪循環の原因を探る中で、解決策として見出したのが「中堅職員の育成」でした。
「多くの職員の退職理由は人間関係がほとんど。さらに原因となる人物は上司であるケースが多いと分かりました。そこで私は若手と上司の間をつなぐ『中堅』こそが重要だと気付き、中堅職員向けの研修を行うことにしました」
【中堅職員向け研修の4ステップ】
1.採用に対して当事者意識を持つ
2.新人教育に対して当事者意識を持つ
3.組織運営に対して当事者意識を持つ
4.次世代育成に対して当事者意識を持つ
「私が狙ったのは、一人ひとりが当事者意識を持つことです。採用に関しての当事者意識、新人教育に対して、組織運営に対して、次世代育成...と、4つのステップに分け、それぞれでブレストとグループワークを行ってもらいました」
離職率10%以上の削減に成功!
研修は採用担当者としても得られることが多かったと船越谷さん。
「ブレストの結果、現場の望む採用ターゲットが明確化。これまで『資格があれば誰でもいい』だったターゲットが、『飲食店で勤務経験がある人』など具体的になりました。さらに皆の意識が向上し、『悪い職員を良い職員にするために、どんな教育が必要か』『やってはいけないことは何か』についての話し合いが行われ、具体的な教育計画が立てられるようになったんです」
【「採用に対して当事者意識を高める」ための研修例】
1.ブレストで「悪い職員像」「良い職員像」をそれぞれ書き出す。
2.ブレスト結果を集計した結果、資格や経験よりも「仕事の価値観」や「人間性」が重視されていると判明。グループワークでこの2点の意識を向上させるために、どんな教育が必要かを話し合う。
3.グループワークの結果を発表。「人間性は変えられないため『仕事中は演技してね』と指導する」「ルールやマニュアルを作成して、明確化する」など、具体的なアイデアを出し合った
上記のような研修を繰り返し行った結果、離職率を10%以上削減することに成功。
「以前は新しい職員が入っても、人間関係のいざこざや教育が原因ですぐに退職してしまい、各事業所が2、3人欠員している状態が続いていました。しかし研修後はトラブルも減り、作成したプログラムに沿って教育が行われるようになったことで離職者が急減。さらに中堅のリーダー達が職員面談を行うなど、一人ひとりが法人の問題に対して当事者意識を持ち、自発的に行動するようになりました」
法人側と現場側が距離を縮めるには?
勉強会の後半では、船越谷さんへ参加者から多くの質問が寄せられました。一例を紹介します。
参加者A:集まって意見を話し合うことに、苦手意識を持つ職員も多いかと思います。どうやって気運を高めていったのでしょうか。
船越谷さん:元々、研修もイベントごともある会社ではないため、ほぼ皆が初顔合わせでした。初めに「あなたにとって悪い職員、良い職員とは」という話し合いやすいテーマを設けたことで、皆が自分の意見を言いやすい雰囲気ができたと感じています。
神内さん:良い話題の後に悪い話題は盛り上がりにくいもの。船越谷さんがファシリテーターとして、まずは現状の課題分析から入り、それを解決するためには...という流れを作ったことが重要だと感じます。
参加者B:そもそもの人員が少ない小さな事業所では、誰に中堅の役割を担ってもらえば良いのでしょうか。
船越谷さん:当社も小規模な施設を多く抱えていますが、1つのセクションに対してリーダー1人、サブリーダー2人という役割を設定しています。サブリーダーを補佐役にすることで、「3人で話し合って決める」という三角形の構図ができ、自発的に話し合いを進めるようになりました。
参加者C:法人事務局側と、現場とでは接する機会も少なく、距離感も遠いのではないでしょうか。どのように関係性を築いていきましたか?
船越谷さん:まずは話をすることが大切です。短時間でも「今どんな悩みを抱えていますか?」とヒアリングを行い、現場が抱える悩みを把握。それから研修を進めていきました。また職員全員に定期的にメールマガジンを配信するなど、日ごろから関係性を築くようにしています。
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。