メルキタMailkita

【レポート】介護オンライン相互勉強会「第9期介護報酬改定、生産性向上の本質とは」

メルキタ介護

2024.03.05

ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は2月15日(木)に行われた「第9期介護報酬改定その1生産性向上の本質とは」のレポートをお届けします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。

介護のあり方が「お世話型」から「支援型」に移行

動向が注目されている次回の介護報酬改定。現在明らかになっている情報では「生産性向上」「医療介護連携」「処遇改善」の3つをキーワードをもとに、大きな改定がなされると予測されています。今回は1番目の「生産性向上」について、神内さんが解説していきます。

「『生産性向上』とは、つまり介護DXや人員基準緩和への取り組みにもとづいた介護サービスの効率化と品質向上を指します。これらについての改定内容には以下の8項目が並びます」

(1)テレワークの拡大

(2)利⽤者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する⽅策を検討するための委員会設置の義務付け

(3)介護ロボットやICT等のテクノロジーの活⽤促進

(4)⽣産性向上に先進的に取り組む特定施設における⼈員配置基準の特例的な柔軟化

(5)介護⽼⼈保健施設等における⾒守り機器等を導⼊した場合の夜間における⼈員配置基準の緩和

(6)認知症対応型共同⽣活介護における夜間⽀援体制加算の⾒直し

(7)⼈員配置基準における両⽴⽀援への配慮

(8)外国⼈介護⼈材に係る⼈員配置基準上の取扱いの⾒直し


特に(3)(5)など、ICTやロボットの活用に関しては介護報酬加算の比率が大きく月当たり100単位、または10単位の加算がなされる予定だと神内さんは説明します。

「改定の背景には、これまでの『お世話型』の介護から『支援型』の介護への移行を目指すというねらいもあります。『支援型』介護とは、従来の介護される側の人たちの尊厳を守り、自立を促す支援をしていくスタイルいで、すべての人が介護する側であり、される側でもあるという考え方です。介護に関わる人を増やすことで、将来にわたり持続可能な介護体制を構築すること、そのためにも介護DXや人員基準緩和をとりいれた効率化やサービスの品質向上は必須になるでしょう」

「常勤」も規制緩和に就労6カ月未満の外国人も条件付きで「算入」へ

勤務時間が週30時間以上の「常勤」職員の規制に関しても緩和が発表されています。育児介護休暇による時短勤務制度の利用で「常勤」扱いとなるほか、疾病治療と仕事との両立を支援する「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿った時短勤務をつくることによって、条件付きで「常勤」として換算が可能となる予定です。

また、注目されているのは就労6カ月未満の外国人介護職員についても、日本語能力試験N1またはN2に合格していることに加えて、事業者が基準を満たしていると判断すれば、以下の条件下で「算入」扱いになる点です。

(ア)⼀定の経験のある職員とチームでケアを⾏う体制とすること。

(イ)安全対策担当者の配置、指針の整備や研修の実施など、組織的に安全対策を実施する体制を整備していること。併せて、両制度の趣旨を踏まえ、⼈員配置基準への算⼊の有無にかかわらず、研修⼜は実習のための指導職員の配置や、計画に基づく技能等の修得や学習への配慮など、法令等に基づき、受⼊れ施設において適切な指導及び⽀援体制の確保が必要であることを改めて周知する。


「事業所の種類にもよりますが、簡単に言えば外国人職員が就業開始直後でも人員基準の上で『算入』とすることができます。これは非常に大胆な規制緩和になるでしょう」

報酬加算ではなく、より良いサービスを目的とした職場づくりを

勉強会の後半では、参加者から相談や質問が寄せられました。一例を紹介します。

参加者A:すでにICTの導入をしている事業所も多いと思います。そうした事業所は、導入後にデータを提出することで加算を受けられるのでしょうか。

神内さん:改訂後にデータを取りまとめることで加算となります。実際には数カ月かかるでしょう。しかし、大切なのは介護報酬加算を目的とするのではなく、導入によって働きやすい職場づくりやサービスの向上を目指すことです。仮に加算が見込めなくとも職員や地域に対して、介護現場の改善を目指して取り組む姿勢をみせていく。それが人員募集にあたっての吸引力や、人材の定着力を上げ、人手不足の解消につながります。

参加者B:若い職員を離職させないための取り組みを強化していきたいです。職員や入居者さんのご家族、地域の方も巻き込んだ育成を目指しています。

神内さん:今後のICT化に向けてデジタルネイティブ世代の若い職員は大きな力となります。介護技術はもちろん、職員や地域とのコミュニケーションもとれるよう教育をしていくことが今後大切になるでしょう。

参加者C:現在まさに産後6カ月のお母さんが働きにくさを感じているのを目の当たりにしています。人員配置基準の緩和で、女性が働きやすい環境になる事に期待です。

神内さん:男性だけが働く社会モデルはすでに崩壊しています。女性がライフイベントを機に職場を離れるのではなく、同じ場所でゆるやかに働き続ける環境になるといいですね。それも含め、今後は身体的健康だけでなく心理的なケアが導入されることも検討されています。

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
kamiuchi.jpg
●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。