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【レポート】オンライン相互勉強会「チームを活かすリーダーに必要なことって?」

メルキタ介護

2023.07.31

ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は7月13日(木)に行われた勉強会「チームを活かすリーダーに必要なことって?」のレポートをお届けします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。

リーダーに必要な5つの資質とは?

介護現場で働くスタッフの生産性を向上させ、業務を効率化するためには、優れたリーダーの存在が不可欠。神内さんは、リーダーとして必要なコンピテンシー(優れた成果をつくり出す、個人の行動特性や能力)は次の5つだと説明します。

(1)リーダーシップ
スタッフを魅了し、「この人と一緒に働きたい」といった意欲を引き出す人間的魅力。意欲が高まれば生産性も向上します。

(2)コミュニケーション
まずは自分の考えや要望、立ち位置をはっきりと伝えることが大切です。その上で相手の立場や意図を考慮し、共感しようとすることも必要。さまざまな異なる考え方から「落としどころ」を見つけることも大切です。

(3)現場解決能力
まずは現場で起きている問題を解析し、現状や問題の原因を把握する力が求められます。その後は複数の視点を取り入れ、問題解決に導く力が必要です。

(4)戦略的思考
長期的な事業継続に不可欠です。戦略を練るためには業界動向の把握、自分たちの強みの分析、目標設定や実行計画の策定、変化への対応、リスク管理と評価、組織全体への戦略の伝達などの能力が求められます。

(5)倫理と専門性
介護福祉の現場では高い倫理規範と専門知識が必要です。法的要件や行動規範に従って、利用者や家族、さらにスタッフの心身を守らなければなりません。常に変化する介護技術や法を理解し、部下たちに学習の機会を提供することも大切です。

4種類のリーダーシップを使い分ける。

前述の5つの資質で最も必要な「リーダーシップ」。しかし古典的なリーダーシップは様々あるものの、今の時代にマッチするのは次の4種類だと神内さんは解説します。 

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(1)変革的リーダーシップ
新しいサービスを始める時、制度改正に対応する時などに有効。リーダーはビジョンやゴールを示してメンバーを引っ張り、新しい取り組みを推進していきます。

(2)サーバント(奉仕)リーダーシップ
安定的にチームメンバーを成長させていくフェーズで必要。メンバーのニーズを丁寧に聞き取り、適切なサポートを行い成長を促進します。メンバー一人ひとりの目標や希望を尊重し、彼らの利益を前面に置いた意思決定をすることが大切です。

(3)民主的リーダーシップ
チームメンバー全員の発言権を尊重し、多様な意見・アイデアを取り入れることでより良い結果を生み出します。多数決だけで解決しようとせず、議論を重ね、全員にとっての最適解を作ることがポイントです。

(4)教育的リーダーシップ
「ティーチング」と「コーチング」の使い分けを意識しましょう。新人や組織にまだなじんでいない人に対して大切なのは「教える」ティーチング。一方のコーチングでは明確な目標やロードマップを作成し、研修などを通じて「成長をサポートする」のが役割です。

「大切なのは、現在事業所が置かれた状況や制度報酬改定といった場面に合わせて、4つを変化させる必要があるということ。メンバーを率いるのが必要か、それとも教育か、判断基準の良し悪しを伝えるのが必要か、シーンに応じて柔軟に変化するリーダーであることを心がけましょう」

時代に合わせて組織を変革させるリーダーに。

勉強会の後半では、参加者から実体験を踏まえた感想が発表されました。一例を紹介します。

参加者A:人材不足が続いており、リーダーが現場仕事と管理を兼ねるプレイングマネージャーばかりになっています。その結果、プレイヤーとしての役割が高くなってしまい部下たちを充分に育成できていません。

神内さん:プレイングマネージャーにならざるを得ない組織も多くあります。大切なのは、局面に合わせて、自分の役割がプレイヤーかマネージャーかを分ける必要があること。その際に自分は今どちらの立場にあるのか、チームメンバーへと明確に伝えることも大切です。

参加者B:リーダーが新しい提案をすると必ず反対があり、それなりに勇気がいると感じています。変化の必要性を上手に伝えることが大切だと実感しています。

神内さん:環境変化を嫌う組織にはよく、スマホのバージョンアップの例を話しています。初めは慣れずに使いにくく感じていても、次第に慣れて新しい機能への恩恵を感じてくる。また変化しない組織のままでは、パフォーマンスが落ちてくる。それを防ぐために、リーダーはチームに対し「何が得られるか」にフォーカスして変化の必要性を伝えることが大切です。

参加者C:勤務歴2~3年のスタッフがリーダーに育ってくれると良いのですが、思うように育ちません。リーダーをつくる仕掛けはないものでしょうか。

神内さん:「資格を持っている」「素質がある」といった属人的な理由に任せては、人がつぶれてしまいます。リーダーを育てるには組織としてプログラムを作り、育成していくことが大切だと考えます。

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。