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【レポート】介護オンライン相互勉強会「離職の本音と働きたくなる事業所とは?」

メルキタ介護

2024.04.04

ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は3月21日(木)に行われた「離職の本音と働きたくなる事業所とは?」のレポートをお届けします。
ふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんをファシリテーターに、北海道社会福祉協議会が運営する北海道福祉人材センターの佐藤貴子さんが登壇し、離職者の本音や転職・復職者が求める労働条件についてお話しいただきました。

離職理由の多くは「人間関係」。当事者ではなくてもストレスに

北海道福祉人材センターは道社協が運営する公的機関であり、福祉専門の無料職業紹介所として機能しています。
同センター福祉人材課課長として事業所と求職者のマッチングを行ってきた佐藤さんは、離職者の悩みが「人間関係」「業務内容や指導内容」「労働条件」の3つに分類されると解説します。
「まず『人間関係』に関しては、特定の職員によるいじめや職員の中に派閥があるなど職員同士の人間関係についての悩みが多く挙げられています。たとえその当事者ではなくても、職場全体の雰囲気の悪さをストレスに感じて、結局は離職につながることも多々あると感じています」

人間関係に関する離職理由の本音

・特定の職員が意地悪をする。
・先輩職員同士の仲が悪い。職員の中で派閥がある。
・上司の態度が威圧的で悪い点ばかり指摘を受ける。
・職員によって態度が変わる。言っていることが違う。
・していない事の責任転嫁をされた上で退職に追い込まれた。
・仕事以外のことでストレスに感じることが多くなり退職。など


福祉の現場では業務上、分担したり協力したりする場面が多いため、人間関係が難しくなると仕事そのものも上手くいかなくなり、離職せざるを得ない状況に追い込まれてしまうという例も少なくないそう。
「離職を防ぐためには管理職による面談回数を増やしたり、無記名で状況を確認するアンケートを取ったりするなど、早い段階から職員のフォローをすることが重要だと考えています」

新しい職場への希望条件は「前職の退職理由」がベースに

「人間関係」の次に悩みが寄せられる機会が多いのが、「業務内容や指導内容」。その中でも圧倒的に多いのが、人手不足により業務の負担が大きすぎるという声だと言います。
「教育体制が整っていない、なかなかキャリアアップできないという体験談や『未経験で知識や経験もない中で、教育や指導を受ける機会もないまま働き続けることに不安を感じている』という切実な声も聞こえてきています」

業務内容・指導に関すること

・人手不足で仕事の負担が大きくなった。
・職員によって業務量に偏りがある。
・体力の限界。
・年齢的に夜勤の介護業務が辛くなってきた。
・聞いても教えてくれない。
・相談できる人・体制がない。
・未経験:知識や経験がなくこのまま勤務するのが怖い。
・指導方法が統一されていない。
・スキルアップできない。


ここまで「退職の本音」を紹介してきた佐藤さんですが、実際には「人間関係」「業務内容や指導内容」「労働条件」の3つの悩みが複合的に重なって離職される人がほとんどだと解説します。
「多くの人が転職・復職の際に最も念頭に置くのが『前職の退職理由』です。特に介護業界の求人票で見られる内容では、送迎業務・調理業務の有無や程度、夜勤への柔軟な対応が可能かといった、直接の業務負担に関する点が重視されています。一方、求人票だけでマッチングすることは難しく、実際には事業所のWebサイトやSNSで情報収集している求職者も多く見られます。今回の『本音』を踏まえた上で職場環境が分かるような情報発信をしてみると、新規採用につながるかもしれません」

新規採用に「施設見学」や「SNS」でアプローチ?

勉強会の後半では、佐藤さんのお話を踏まえて参加者同士の意見交換が行われました。一例を紹介します。

参加者A:佐藤さんから「複数の悩みが重なって、限界にきた時に辞めてしまう」というお話もありましたが、限界を迎える前の段階の手立てや新規採用に関する実例があれば皆さんに聞いてみたいです。

参加者B:当事業所では長時間労働が原因で離職が続く時期があったため、現在では7時間労働を徹底し、さらに同じ職種・同じチームのメンバーでの交流会を設けて、離職へのリスクヘッジをはかっています。また最近はシニアや主婦、障がいのある方も働ける職場づくりを計画中です。専門分野以外の仕事を担ってもらうことで、一人ひとりの業務負担も軽減されると考えています。

参加者C:当事業所でも専門職以外の担い手を増やす活動を強化しています。求職者は自宅から近い所に転職を希望される方も多いと聞き、近所に施設見学のご案内チラシをポスティングしました。まずは施設を知ってもらい、もし良かったら働いてみませんか?というスタンスです。その結果、参加者はなんと2日間で30名。そのうち10名の方がこの春から業務に携わってくれることになりました。

神内さん:施設見学をツアーとして有料化している例もあります。食事会のような感じで開催して、とにかく認知度を上げる。今すぐ働きたい転職者というよりは、将来的に働き手になりそうな階層にまでアプローチをするための企画ですね。

参加者D:当事業所ではSNSを活用しています。当初は多忙を理由に否定的だった職員も視聴回数やフォロワー数が増えるに従い面白さを感じてくれるようになりました。さらに投稿をきっかけに職場の雰囲気が良くなったり、雇用につながったりすると「自分たちが事業所を良くしている」という当事者意識が沸くようで、離職防止にもつながっていると感じています。

神内さん:SNSがきっかけで認知度が上がる、雇用につながるという例は私も聞いています。職場の雰囲気を伝えるような内容の投稿だとリーチ数が上がるようです。

以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。

<講師>
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●ふくしのよろずや神内商店合同会社

代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。