【レポート】介護オンライン相互勉強会「新入職員を支える!5月病対策と成長支援」
メルキタ介護
2024.06.05
ジョブキタ主催で毎月開催している「介護事業所向けオンライン相互勉強会」。今回は5月15日(水)に行われた「新入職員を支える!5月病対策と成長支援」のレポートをお届けします。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さんです。
何月でも起こりうる介護業界の「五月病」
五月病とは主に5月の大型連休明け、環境の変化によって疲労が蓄積されることで起こる心身不調全般を指します。介護業界の五月病にはどのような特徴があるのでしょうか。
「介護業界は大型連休はなく、5月に限らず流動的に職場環境の変化が生じます。『五月病』は実質何月でも起こりうる病と言えるでしょう。さらにコロナ禍を脱したばかりの今、緊張感からの解放や社内ルールの変更によっても、メンタルヘルスケアが必要な人は大勢いると考えられています」
新しい職場環境に慣れることで症状が改善するとも言われている「五月病」ですが、中には適応障害やうつ病を引き起こす人も。こうした精神疾患の併発は、重大な介護事故を起こすことにつながる可能性もあると神内さんは指摘します。
「責任感の強い人や1人で抱え込みがちな人、仕事熱心な人、完璧主義者、几帳面で真面目な人、気を遣いすぎてしまう方など、性格的にメンタルヘルス不調を発症しやすい特性を複数持っている従業員については、未然の注意が必要です。さらに予兆を見逃さず、万が一不調を訴えた場合にも復帰支援を充実させることが大切となります」
メンタルヘルス不調の予兆
・欠勤、遅刻、早退が増える
・表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
・仕事上のミスが増える
・対人関係のトラブルが増える
・仕事がはかどらないことが増える
・集中力が低下している
・身だしなみを気にしなくなる
・イライラした態度が目立ち、怒りっぽくなる
・気持ちが不安定になる
・報告や相談、口数、職場での会話が少なくなる(あるいはその逆)
・悲観的な言葉が増え、涙もろくなる
便利ツールを取り入れて予防と早期発見に重点を置いたケアを
職場内でのメンタルヘルスケアにおいて、従業員一人ひとりのセルフケアはもちろん、職場の管理監督者が部下のケアを行う「ラインケア」の重要性が高まっていると神内さんは解説します。
「昔は心身の不調は『自己管理』だと言われていましたが、現代ではストレスマネジメントも管理者の業務の一環です。ストレス管理プログラムを導入する、ストレスケアの普及活動をする、悩みを抱えた従業員のサポート体制を強化するなど、会社としてできる限りの対策をしていかなければなりません。また、介護業界では利用者さんとのコミュニケーションが上手くいっていないと従業員のストレスが溜まりやすくなる傾向にあります」
手軽に利用できるメンタルヘルスケアコンテンツが集められた厚生労働省「こころの耳」は活用するべきだというお話もありました。「働く方へ」「ご家族の方へ」「事業者の方へ」「部下を持つ方へ」「支援する方へ」とそれぞれのページが用意されているのも利用のしやすさにつながっているようです。
職場における心とからだの健康づくりのための手引き~事業場における労働者の健康保持増進のための指針~
新型コロナウイルス感染症に対応する介護施設等の職員のためのサポートガイド(第1版)
『職場における心の健康づくり』
こころの耳
治療と仕事の両立について
「コミュニケーション」と「フィードバック」でメンタルヘルス不調を防ぐ
勉強会の後半では、神内さんの話を踏まえて参加者同士の意見交換が行われました。一例を紹介します。
参加者A:配置人数は足りているのに「人数不足だ」という不満の声が上がることが慢性的に繰り返されていて、管理者として困っています。
神内さん:事実として配置人数に不足がないことは説明しなければなりませんが、その上で、なぜ人手不足を感じているのか、その原因を全員で探ることが大切です。職員の介護技術が低いのか、お互いの配慮不足なのかなど、具体的な原因と解決方法を考えてみると良いでしょう。
参加者B:私の施設ではある職員に対し介護事故の危険を感じるようなことがありました。聞けば、4月にお子さんが進学のため一人暮らしを始めたようで、心配が原因で精神的に不安定だった模様です。
神内さん:日頃の従業員とのコミュニケーションの重要性がわかりますよね。仕事だけではなく、プライベートでの環境変化が仕事のミスにつながることはよくあります。コロナ禍を経て、児童養護施設や障がい福祉施設だけではなく、高齢者福祉施設でも定期的に心理カウンセラーの訪問を依頼している事業所は増えていますね。
参加者C:アンケート実施後のフィードバックを強化していきたいです。アンケート内容がきちんと届いているのか、解決策があるのかどうかなど、結果を反映できる利用方法でなければいけないですよね。重要なことは何でしょうか。
神内さん:まずは守秘義務を守り、アンケートの安全性を確保すること。そして必ずフィードバックすること。小さなことでも書いてくれた内容に対して解決策を打ち出して実行していけば、次第にアンケート実施の意義は高くなっていきます。最終的にはアンケートが実施されなくとも、仲間が集まって解決方法を模索するようになるでしょう。
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。
●ふくしのよろずや神内商店合同会社
代表 神内秀之介さん
公益社団法人日本社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、介護経営のコンサルタントとして、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のために講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。