【レポート】介護事業所向けオンライン相互勉強会 「スタッフが長く働ける職場づくり」
メルキタ介護
2021.12.06
毎月、ジョブキタ主催で開催している「介護事業所向け オンライン相互勉強会」。今回は11月17日(水)に行われた「スタッフが長く働ける職場づくり」の様子をレポート。講師はふくしのよろずや神内商店合同会社の神内秀之介さん、そして北海道アルバイト情報社・ジョブキタ紹介でキャリアアドバイザーを務める1名も解説として登壇しました。
代表 神内秀之介さん
公益社団法人北海道社会福祉士会理事を筆頭に数多くの肩書を持ち、福祉業界のサービスや経営環境、就労環境の向上のため、介護経営のコンサルタントとして、講演活動やさまざまな経営のアドバイスを行っている。
人材確保ができなければリスクが発生する
採用をテーマに取り上げた前回に続き、「採用と定着の両立が重要」と神内さん。今回は定着のポイントとして「業務内容や労働条件の説明を丁寧に行う」「採用者の受け入れ体制を整える」など、具体的に解説していきます。また人事評価に対する不満や不信が離職の原因となると説き、「人事評価制度そのものを、従業員に評価してもらう仕組みも検討してください」と訴えます。
また優秀な人材の確保・定着を意味する「リテンション」を目標として、定着が成されないとドミノ倒し式にリスクが発生すると話しました。
【リテンションができていない企業で発生するリスク 】
1.優秀な人材の流出による人的損失
2.離職した人材にかけた教育や育成コスト、時間の損失
3.人材の離職により残された従業員が負担する作業のコストの発生
4.新たに人材を確保するための採用活動コストの発生
5.新たな従業員に対する教育や育成コストの発生
6.離職や入社ごとに発生する人事側コストの発生
面接に大切な2つのこと
次に、北海道アルバイト情報社より、良い人材を確保するために必要な面接について、実例を元に解説しました。
例として挙げたのは求職相談に訪れた40代の女性。介護福祉士資格を持っており、グループホームでの実務経験が7年ある経験者です。「経験を生かしグループホームで働きたい」と希望した女性に、社風が良く、従業員の定着率も高いA、Bの2社を提案しました。両社の違いは以下の通り。
【両社の比較】
A社 | B社 | |
運営する施設 | グループホーム、デイサービス、有料老人ホームなどを運営 | グループホームを複数展開 |
---|---|---|
企業の特徴 | 社風も良く、安定している企業 | 手厚い人員配置が特徴 |
給与条件 | 給与条件も相場以上 | 給与条件は相場並み |
面接担当 | 面接担当が代表 | 施設管理者の一人 |
一見、A社のほうが幅広い施設を持つ事や安定した給与という面では魅力的に映ります。しかし女性が選んだのはB社だったそう。その理由は面接内容にありました。
【両社の面接内容】
A社 | B社 | |
採用枠 | 面接直前にグループホームの採用枠が埋まったため、デイサービスを提案 | 求職者の希望通りにグループホームでの採用枠を提案 |
---|---|---|
施設見学の有無 | コロナ禍のため、見学できず | 面接の前に見学。施設の細やかな説明や他の職員が働く様子も確認 |
面接の内容 | デイサービスの仕事や異動可能である事を企業側から説明 | 求職者の疑問に答える形で回答 |
A社は直前に採用枠が埋まってしまったため、デイサービスを提案。面接時はデイサービスの仕事内容や、異動が可能である事をていねいに説明するなど、最善を尽くしました。しかし、施設見学が無かったため働いてからのイメージができなかったそうです。
一方でB社は、面接の前に施設見学を実施。これがアイスブレイク(=緊張をほぐす、場を和ませるためのコミュニケーション)となり、面接では求職者が質問しやすい状況に。働いてからのイメージがわかり、安心感に繋がったのだそう。A社のように施設見学ができない場合は写真や映像などを使い、働くイメージを抱いてもらう事も大切だとアドバイスし、優秀な人材を確保するためには「アイスブレイクを入れる事、疑問に答える事の2点が重要」とまとめました。
制度や社風の見直しで定着率アップ
質疑応答の時間では、神内さんとHAJの社員3名、更に参加者も交えて議論しました。一例をご紹介します。
Q.「良い社風」って、何?
A.明確な条件はありませんが、従業員の雰囲気が良い事です。特に、役員や管理者など立場が上の人と、現場で働く介護士が立場を超えて親しげに会話をしている企業は、職場の満足度や定着率も良い傾向にあります(HAJ)
Q.人材確保に向けて、参加者の皆さんはどんな工夫をしていますか?
A.介護業界にブラックなイメージを抱く方が多い。そんな悪印象を覆すため、国が定めた「働き方改革」に率先して取り組む様子を説明しています。特に、残業がない職場を実現してからは離職率も低く、子育て中の方も安心して働いている印象です(参加者)
Q.パートの採用に苦労しています
A.休暇の取得やシフト調整のしやすさに加え、正社員登用といったキャリアパスを示す事も大切。また労働時間だけでなく成果を認める評価制度をつくる、正社員がパートに業務を押し付けていないか現場を見るなど、いま一度労働環境を見直すべきです(神内さん)
以上、今回のレポートは勉強会の一部を紹介しました。